もちろん、その知識は正確です。しかし、なぜ動詞によって形が変わるのか、その理由を理解しないままだと、新しい動詞が出てくるたびに「どっちだっけ?」と迷ってしまいますよね。
実は、`to do` と `-ing` にはそれぞれ核となるイメージがあり、ネイティブスピーカーはその動詞が持つ意味合いから、感覚的にどちらの形が続くかを判断しています。この記事では、そんな丸暗記から脱却するための、本質的な使い分けのルールを解説していきます。
結論:イメージは「未来志向」か「現実・過去志向」か
動詞の後に続く形を選ぶための、最も重要なイメージ。それは、話している内容が「これから」のことか、「これまで・今」のことかという時間的な方向性です。
- to do(不定詞):「未来」に向かうイメージ → これからすること、まだ実現していないこと。
- -ing(動名詞):「現実・過去」のイメージ → すでに起きていること、習慣的にしていること、過去の経験。
`to do` は未来を指す矢印(→)、`-ing` は現実や過去を内包する円(↺)のようなイメージです。この動詞が持つ「志向性」を理解すれば、リストを覚えなくても自然な形が選べるようになります。
未来へ向かう `to do`(不定詞)
`to do` は、まだ実現していない未来の行動や目標について語る動詞と非常に相性が良い形です。これからしたいこと、するべきこと、計画していることなど、「今ここ」から未来を見ている感覚です。
`to do` を伴いやすい動詞のグループ
希望・願望・約束(これから〜したい)
まだ手にしていない未来を望む気持ちを表します。
【例文】
I want to travel around the world.
日本語訳:私は世界中を旅したいです。(`want`, `hope`, `wish`, `would like`, `promise` など)
計画・決心(これから〜するつもり)
未来の行動計画や、その場での決断を表します。
【例文】
She decided to quit her job.
日本語訳:彼女は仕事をやめることを決心しました。(`plan`, `decide`, `choose`, `offer`, `refuse` など)
現実・過去を内包する `-ing`(動名詞)
`-ing` は、すでに経験していることや、習慣として行っている現実の行動、あるいは過去の出来事など、リアルな手触りのある行為と相性が良い形です。未来のことではなく、今までの経験や事実を話している感覚です。
`-ing` を伴いやすい動詞のグループ
楽しむ・避ける・気にする(今やっていること)
目の前の行為や、一般的な行為に対する感情を表します。
【例文】
He enjoys listening to classical music.
日本語訳:彼はクラシック音楽を聴くことを楽しみます。(`enjoy`, `avoid`, `mind`, `practice` など)
やめる・終える(これまでやっていたこと)
継続していた行為を中断・完了することを表します。
【例文】
I finally finished writing my report.
日本語訳:私はついにレポートを書き終えました。(`finish`, `stop`, `quit`, `give up` など)
【要注意】両方使えるが、意味が大きく変わる動詞
中には `to do` と `-ing` の両方を続けられる動詞もあります。しかし、その場合は「未来志向」と「現実・過去志向」のイメージの違いから、文全体の意味が大きく変わるため、特に注意が必要です。
動詞 | `to do` の場合(未来志向) | `-ing` の場合(過去志向) |
---|---|---|
remember | 忘れずに〜する Remember to lock the door. (ドアに鍵をかけるのを忘れないで) |
〜したことを覚えている I remember locking the door. (ドアに鍵をかけたことを覚えている) |
stop | 〜するために立ち止まる He stopped to smoke. (彼はタバコを吸うために立ち止まった) |
〜することをやめる He stopped smoking. (彼は禁煙した) |
try | (努力して)〜しようとする I tried to open the jar. (その瓶を開けようと頑張った) |
試しに〜してみる I tried opening the jar. (試しにその瓶を開けてみた) |
まとめ
今回は、動詞の後に続く `to do` と `-ing` の使い分けについて、丸暗記に頼らないための本質的なイメージを解説しました。全ての動詞がこのルールに100%当てはまるわけではありませんが、この「志向性」の感覚を掴んでおけば、多くの場面で迷うことがなくなります。
次にどちらの形を使うか迷ったら、その動詞が「未来のこと」を指しているのか、それとも「現実や過去のこと」を指しているのか、その時間的な方向性を考えてみてください。そうすれば、よりネイティブに近い感覚で、自然な英語を組み立てることができるようになるでしょう。
今日のポイント
- ✅ `to do`(不定詞) は、まだ実現していない「未来」のこと(希望、計画、決心など)を指す動詞と相性が良い。
- ✅ `-ing`(動名詞) は、すでに行っている「現実」や「過去」の経験(楽しむ、やめる、習慣など)を指す動詞と相性が良い。
- ✅ `remember`, `stop`, `try` などの動詞は、後に続く形で意味が大きく変わるため特に注意が必要。
- ✅ 丸暗記ではなく、動詞が持つ「未来志向」か「現実・過去志向」かのイメージで判断するのがコツ。