TOEIC800点は世界で通用するレベル?評価と実情のギャップ


英語コミュニケーション力を判定するテストといえば日本ではTOEICが代表的です。多くの企業が採用や人事考課の際にTOEICスコアを参考にしており、日本企業でキャリアアップを図る上では目標の1つとなります。

TOEICの日本人平均スコアは520点(※1)です(2018年)。800点ともなれば企業が国際部門の社員に求めるスコアの平均よりも高く、世間的にも「かなり英語のできる人」というイメージが得られます。

しかしこうしたイメージと実際の英語力にはギャップがあるのも実情です。この記事では社会的イメージと実情ついて詳しく解説し、その上で「TOEIC800点」がキャリアにとって持つ意味を考えます。

TOEIC800点のテストとしての評価

一般的には、TOEICで990点満点中800点を取れば十分高い英語スキルを持っているというイメージがあります。TOEICのスコアが社会的にどのように評価されているかを詳しく見てみましょう。

開発元であるETSの評価は?

TOEICを開発・提供しているETSは「TOEIC Listening & Reading Test」のスコアと英語コミュニケーション能力の関係について検証し、次のような評価スケールを公表しています。

レベルTOEICスコア評価
A860点ネイティブレベルには一歩及ばないが、適切・正確・流暢にコミュニケーションができる。
B730点通常会話は完全に理解し、深い話題にもさほど支障なく対応できる。どんな状況でも適切にコミュニケーションできる素地を備えている。正確さ・流暢さには差が見られる。
C470点通常会話なら要点を聞き取れ、文法・表現力に不足はあっても自分の意思を支障なく伝えられる。複雑な場面では対応力には差が見られる。
D220点ゆっくり話してもらうなどの配慮があれば会話を理解でき、身近な話題であれば応答もできる
E220点未満断片的な聞き取り・発話しかできず、コミュニケーションが成り立たない

※ETS「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表」をもとに作成

この表に当てはめると、「TOEIC800点」の人は英語で会話を行う「素地」をしっかり身につけていて、どんな状況でもある程度対応でき、部分的にはぎこちなくなるところがあるものの、相当広い範囲の話題で流暢にコミュニケーションをすることができます。

TOEIC800点の順位は?

TOEICの実施・運営元であるIIBCが公表しているデータ(※2)によると、TOEICで795点以上の人は毎回だいたい上位13%の範囲に入ります。845点以上の人は上位7~8%ですので、TOEIC800点の人は100人中10位前後に位置すると言えるでしょう。

日本企業での評価は

IIBSが2019年に行ったアンケート調査(※3)によると、企業・団体が新入社員・職員に期待する(または採用要件とする)TOEICスコアの平均は「新卒採用」で545点、「中途採用」で560点でした。また、「英語を使用する部署の中途採用」では620点、「海外出張者」「赴任者」の選別ではそれぞれ620点、635点となっています。

2013年には上場企業のみを対象とするアンケート調査(※4)が行われています。それによると、「新卒採用」で期待するスコアの平均は565点、「中途採用」では710点。「グローバル化に伴う業務遂行」のために「全社員」に求められるスコアは600点、国際部門社員に限定すると750点でした。

「TOEIC800点」は、上場企業を含めたいていの日本企業が期待するレベルを上回っており、英語力に関して言えば幅広い業種・企業の採用に応募できる水準です。積極的に海外展開をしている企業の国際部門にも応募可能なレベルだと言えるでしょう。

世間でのTOEIC800点のイメージ

ETSの評価スケールで見ても企業の採用基準で見ても、730点取れれば「通常の場面では英語がペラペラ」というイメージが成り立ちます。ETSの評価スケールが広く知られていることもあり、世間一般のイメージもだいたいそんなところです。800点を超えれば「非常に英語ができる日本人」と見なされることになります。

TOEIC800点の実情~イメージと実力の違い

では実際の場面ではどうかというと、そうした評価・イメージに相応するコミュニケーションの実力を持つ人はあまりいないのが実情です。また、人により大幅に実力は異なります。

以下では「TOEIC800点の人」のモデルケースを2つ取り上げ、評価スケール・世間イメージと比べてみます。第一のケースは比較的コミュニケーション力がある「TOEIC800点の日本人」、第二のケースは典型的な「TOEIC800点の日本人」です。

実力がある「TOEIC800点の日本人」

勉強だけで英語に接しているのではなく、日頃から英語を話す・聞く機会がある日本人を想定しています。

ETSスケール・世間イメージ実情
リスニングほぼすべて聞き取れる。もちろん映画の字幕は不要。日常的で慣れている話題であれば結構聞き取れ、内容・意図をざっくり理解できる。映画は字幕なしで展開がわかることも多いが、じっくり味わうには字幕が必要。
スピーキングネイティブとの違いは明瞭だが、日本人が憧れるレベルでペラペラ定型的なフレーズをかなり使いこなせ、詰まりながらも自分の意思をある程度伝えられる。深い会話はできず、ビジネスでの議論は無理。
リーディングWebニュース・新聞記事・雑誌・エンタメ小説などはだいたい辞書無しで読める。専門書などは手間取る。典型的な「TOEIC800点の日本人」(下記)よりは少しだけ読める。

典型的な「TOEIC800点の日本人」

勉強以外であまり英語に接することのない日本人(=典型的な日本人)を想定しています。

ETSスケール・世間イメージ実情
リスニングほぼすべて聞き取れる。もちろん映画の字幕は不要。断片的にしか聞き取れない。たいていは何を言っているのか理解できない。映画の音声は字幕がないとほぼ暗号。
スピーキングネイティブとの違いは明瞭だが、日本人が憧れるレベルでペラペラよほど定型的なフレーズじゃないととっさに出てこない。質問に対してはせいぜい「Yes/No」が言えるくらい。
リーディングWebニュース・新聞記事・雑誌・エンタメ小説などはだいたい辞書無しで読める。専門書などは手間取る。シンプルな英語で要点だけを述べた記事ならば辞書無しで大意をつかめることもある(受験英語のおかげ)。細部は怪しい。小説は大半の単語を辞書で調べなければならず、ちょっと難しい構文になると歯が立たない。

なぜ大きなギャップが?

ETSの評価スケールから得られるイメージと実情が乖離(かいり)している原因は色々と推測できます。

マークシート方式(3~4択問題)であること、問題文を読み上げる音声が常に丁寧ではっきりしていること、そもそもテストなので頻出範囲や問題形式に合わせて準備できることなどが挙げられます。そして何より、一般にTOEICと呼ばれているテストは「TOEIC Listening & Reading Test」で、スピーキング・ライティングはテストされず、リスニングとリーディングさえできれば高得点が取れることが大きいでしょう。

こうしたテストの性格のため、勘の良さとリーディング力があればおぼろげながらに聞き取れるというレベルでもTOEICでかなりの高得点(例えば800点や900点)を取ることは可能です。英会話の達者な人がTOEICを受けたとすると特殊な事情がない限り点数が低いということは考えられませんが、TOEIC900点台でもまともにしゃべれない人はたくさんいます。

TOEICスコアがスピーキング力の指標になるというデータをETSは公表しているのですが、1982年発表と非常に古く、1979年に行われた第1回TOEICテストの受験者を対象にしたものです。「TOEIC対策」を何らしていない受験者であればスコアと実力がある程度相関するのかもしれません。

「TOEIC800点」は就活には有効

実力との関係はさておき、TOEICスコアが就職活動で使えることは間違いありません。ここでは就活ツールとしての「TOEIC800点」についてまとめます。

エントリーシートでの足切りを回避

「TOEIC800点」はほとんどの企業・ポストで「合格」レベルですから、エントリーシート段階での「足切り」を避けやすくなるでしょう。ただしTOEICだけで足切りするかどうかを判断することはまれです。

説明会やエントリーシートの段階で学歴による足切りが行われているのは公然の秘密です。学歴が不利という場合、「TOEIC800点」がそれをある程度補うことができるかもしれません。

大手企業の国際部門を視野に入れられる

上で引用した2013年の調査では国際部門の社員に求めるスコアレベルの平均が750点でした。細かく見ると、「900点以上」を求める企業の割合が11.1%、「800~895点」が26.6%、「795点以下」が62.2%です。

国際展開している大企業の海外出張・赴任前提のポジションに応募するには「TOEIC800点」では足りないかもしれませんが、上場企業の6割以上では国際部門にも応募が可能なレベルです。

自助努力・克己力の証明としてアピールできる

テストで平均をはるかに超えた高得点を取るには一般的に相当の努力が必要ですので、自助努力・克己力の証として働きます。

「TOEIC800点」が英語コミュニケーション力や英語による業務に結びつくかどうかはともかく、「自分から目標に向かって努力できる」という素質をアピールするには十分な得点と言えます。

今後の英語力向上をアピールできる

「TOEICが800点」だからといって額面通りに英語の実力を期待する企業はあまりないでしょう。しかし、「将来的に海外でも活躍できる人材だ」と評価してくれるかもしれませんので、面接でのアピールポイントとして利用できます。

実際、「TOEIC800点」はリスニングやリーディングがある程度できていないと取れませんので、本当の英語力をつけるためのベースは身についていると言えます。自己アピールをするだけでなく実際に努力と経験を重ねていけば、海外で活躍することも夢ではありません。

まとめ

「TOEIC800点」に対するイメージと実力の間にはギャップがあり、ギャップの大きさには個人差があります。実情を知らない相手に対しては実力との落差が余計に強調されてしまうかもしれませんが、企業の多くは額面通りには受け取れないことを承知しているはずです。その上で、能力の「伸びしろ」を測る指標として重視しているのだと思われます。

また、「TOEIC800点」の実力そのものも決してないがしろにできるものではありません。本格的な英語力を身につけていくための「敷居」はすでに超えていると言えます。まだ800点には届かないという人も、この「敷居」を超えることをまずは目標にして学習に励んでください。

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