TOEIC800点は世界で通用するレベル?評価と実情のギャップ

2019年12月16日

英語コミュニケーション力を判定するテストといえば日本ではTOEICが代表的です。多くの企業が採用や人事考課の際にTOEICスコアを参考にしており、日本企業でキャリアアップを図る上では目標の1つとなります。

TOEICの日本人平均スコアは520点(※1)です(2018年)。800点ともなれば企業が国際部門の社員に求めるスコアの平均よりも高く、世間的にも「かなり英語のできる人」というイメージが得られます。

しかしこうしたイメージと実際の英語力にはギャップがあるのも実情です。この記事では社会的イメージと実情ついて詳しく解説し、その上で「TOEIC800点」がキャリアにとって持つ意味を考えます。

TOEIC800点のテストとしての評価

一般的には、TOEICで990点満点中800点を取れば十分高い英語スキルを持っているというイメージがあります。TOEICのスコアが社会的にどのように評価されているかを詳しく見てみましょう。

開発元であるETSの評価は?

TOEICを開発・提供しているETSは「TOEIC Listening & Reading Test」のスコアと英語コミュニケーション能力の関係について検証し、次のような評価スケールを公表しています。

レベルTOEICスコア評価
A860点ネイティブレベルには一歩及ばないが、適切・正確・流暢にコミュニケーションができる。
B730点通常会話は完全に理解し、深い話題にもさほど支障なく対応できる。どんな状況でも適切にコミュニケーションできる素地を備えている。正確さ・流暢さには差が見られる。
C470点通常会話なら要点を聞き取れ、文法・表現力に不足はあっても自分の意思を支障なく伝えられる。複雑な場面では対応力には差が見られる。

※ETS「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表」をもとに作成

この表に当てはめると、「TOEIC800点」の人は英語で会話を行う「素地」をしっかり身につけていて、どんな状況でもある程度対応でき、部分的にはぎこちなくなるところがあるものの、相当広い範囲の話題で流暢にコミュニケーションをすることができます。

TOEICの実施・運営元であるIIBCが公表しているデータ(※2)によると、TOEICで795点以上の人は毎回だいたい上位13%の範囲に入るので、100人中10位前後に位置すると言えるでしょう。

日本企業での評価は

IIBSが2019年に行ったアンケート調査(※3)によると、企業・団体が新入社員・職員に期待する(または採用要件とする)TOEICスコアの平均は以下の通りです。

新卒採用545点
中途採用560点
英語を使用する部署の中途採用620点
海外出張者620点
海外赴任者635点

2013年には上場企業のみを対象とするアンケート調査(※4)が行われており、それによると、社員に期待するTOEICスコアは以下の通りでした。

新卒採用565点
中途採用710点
「グローバル化に伴う業務遂行」を推進する企業の社員600点
国際部門社員750点

「TOEIC800点」は、上場企業を含めたいていの日本企業が期待するレベルを上回っており、英語力に関して言えば幅広い業種・企業の採用に応募できる水準です。積極的に海外展開をしている企業の国際部門にも応募可能なレベルだと言えるでしょう。

世間でのTOEIC800点のイメージ

ETSの評価スケールで見ても企業の採用基準で見ても、730点取れれば「通常の場面では英語がペラペラ」というイメージが成り立ちます。ETSの評価スケールが広く知られていることもあり、世間一般のイメージもだいたいそんなところです。800点を超えれば「非常に英語ができる日本人」と見なされることになります。

TOEIC800点の本当の実力

では実際の場面ではどうかというと、そうした評価・イメージに相応するコミュニケーションの実力を持つかは、人により大幅に実力は異なるようです。

以下では「TOEIC800点の人」のモデルケースを2つ取り上げ、評価スケール・世間イメージと比べてみます。日頃から英会話に触れ、比較的コミュニケーション力がある「TOEIC800点の日本人」をパターン1、勉強以外で英語を使うことはない典型的な「TOEIC800点の日本人」をパターン2として、両者を比べてみましょう。

リスニングETSスケール・世間イメージ実情
パターン1ほぼすべて聞き取れる。もちろん映画の字幕は不要。日常的で慣れている話題であれば結構聞き取れ、内容・意図をざっくり理解できる。映画は字幕なしで展開がわかることも多いが、じっくり味わうには字幕が必要。
パターン2ほぼすべて聞き取れる。もちろん映画の字幕は不要。断片的にしか聞き取れない。たいていは何を言っているのか理解できない。映画の音声は字幕がないとほぼ暗号。
スピーキングETSスケール・世間イメージ実情
パターン1ネイティブとの違いは明瞭だが、日本人が憧れるレベルでペラペラ定型的なフレーズをかなり使いこなせ、詰まりながらも自分の意思をある程度伝えられる。深い会話はできず、ビジネスでの議論は無理。
パターン2ネイティブとの違いは明瞭だが、日本人が憧れるレベルでペラペラよほど定型的なフレーズじゃないととっさに出てこない。質問に対してはせいぜい「Yes/No」が言えるくらい。
リーディングETSスケール・世間イメージ実情
パターン1Webニュース・新聞記事・雑誌・エンタメ小説などはだいたい辞書無しで読める。専門書などは手間取る。典型的な「TOEIC800点の日本人」(下記)よりは少しだけ読める。
パターン2Webニュース・新聞記事・雑誌・エンタメ小説などはだいたい辞書無しで読める。専門書などは手間取る。シンプルな英語で要点だけを述べた記事ならば辞書無しで大意をつかめることもある(受験英語のおかげ)。細部は怪しい。小説は大半の単語を辞書で調べなければならず、ちょっと難しい構文になると歯が立たない。?

なぜ大きなギャップが?

ETSの評価スケールから得られるイメージと実情が乖離(かいり)している原因としては、主に以下の4つが推測されます。

  • マークシート方式(3~4択問題)であること
  • 問題文を読み上げる音声が常に丁寧ではっきりしていること
  • 頻出範囲や問題形式に合わせて準備できること
  • スピーキング・ライティングはテストされないため、リスニングとリーディングさえできれば高得点が取れること

こうしたテストの性格のため、勘の良さとリーディング力があればおぼろげながらに聞き取れるというレベルでもTOEICでかなりの高得点(例えば800点や900点)を取ることは可能です。英会話の達者な人がTOEICを受けたとすると特殊な事情がない限り点数が低いということは考えられませんが、TOEIC900点台でもまともにしゃべれない人はたくさんいます。

TOEICスコアがスピーキング力の指標になるというデータをETSは公表しているのですが、1982年発表と非常に古く、1979年に行われた第1回TOEICテストの受験者を対象にしたものです。「TOEIC対策」を何らしていない受験者であればスコアと実力がある程度相関するのかもしれません。

「TOEIC800点」は就活には有効

実力との関係はさておき、TOEICスコアが就職活動で使えることは間違いありません。ここでは就活ツールとしての「TOEIC800点」についてまとめます。

エントリーシートでの足切りを回避

「TOEIC800点」はほとんどの企業・ポストで「合格」レベルですから、エントリーシート段階での「足切り」を避けやすくなるでしょう。ただしTOEICだけで足切りするかどうかを判断することはまれです。

説明会やエントリーシートの段階で学歴による足切りが行われているのは公然の秘密です。学歴が不利という場合、「TOEIC800点」がそれをある程度補うことができるかもしれません。

大手企業の国際部門を視野に入れられる

上で引用した2013年の調査では国際部門の社員に求めるスコアレベルの平均が750点でした。細かく見ると、「900点以上」を求める企業の割合が11.1%、「800~895点」が26.6%、「795点以下」が62.2%です。

国際展開している大企業の海外出張・赴任前提のポジションに応募するには「TOEIC800点」では足りないかもしれませんが、上場企業の6割以上では国際部門にも応募が可能なレベルです。

自助努力・克己力の証明としてアピールできる

テストで平均をはるかに超えた高得点を取るには一般的に相当の努力が必要ですので、自助努力・克己力の証として働きます。

「TOEIC800点」が英語コミュニケーション力や英語による業務に結びつくかどうかはともかく、「自分から目標に向かって努力できる」という素質をアピールするには十分な得点と言えます。

今後の英語力向上をアピールできる

「TOEICが800点」だからといって額面通りに英語の実力を期待する企業はあまりないでしょう。しかし、「将来的に海外でも活躍できる人材だ」と評価してくれるかもしれませんので、面接でのアピールポイントとして利用できます。

実際、「TOEIC800点」はリスニングやリーディングがある程度できていないと取れませんので、本当の英語力をつけるためのベースは身についていると言えます。自己アピールをするだけでなく実際に努力と経験を重ねていけば、海外で活躍することも夢ではありません。

TOEIC800点を取るためには

それでは、夢のTOEIC800点を達成するには、何を押さえていけば良いのでしょうか?ここではおすすめの教材も交えながら、ポイントを解説していきます。

高校英語・英文法をマスター

まず大前提として、高校までに習う英文法はすべてマスターしておく必要があります。苦手な項目は致命傷となりかねないので、理解漏れのないよう、しっかりと復習しておきましょう。

オススメ教材

高校までの英文法を効率よく復習したいという方には「高校 英文法を ひとつひとつわかりやすく。」がおすすめです。イラスト付きで学べる重要単語や、何度も反復できる練習問題、さらに正しい発音が身に付くCDもセットになっているので、文法に苦手意識を持っている方でも楽しく英語を身に付けることができますね!

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ボキャブラリー対策

TOEIC800点を狙うなら、語彙力アップも絶対に欠かせません。闇雲に単語を覚えていっても効率が悪いので、TOEICテストに実際に出題される頻出単語を要領よく押さえていくことがポイントとなります。

オススメ教材

TOEIC受験に向けて語彙力を強化したいという方には「TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)」がおすすめ。TOEICで頻出の単語にフォーカスしているため、とにかく無駄のないTOEIC対策をすることができます。

「860点レベル」のように、単語がスコア別に分けられているのもこの教材の大きな特徴です。全単語に無料音声が付いているという充実っぷりなので、TOEIC受験者にとってこの上ない味方となってくれることでしょう。

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英語力の素地は十分にある

「TOEIC800点」に対するイメージと実力の間にはギャップがあり、ギャップの大きさには個人差があります。実情を知らない相手に対しては実力との落差が余計に強調されてしまうかもしれませんが、企業の多くは額面通りには受け取れないことを承知しているはずです。その上で、能力の「伸びしろ」を測る指標として重視しているのだと思われます。

また、「TOEIC800点」の実力そのものも決してないがしろにできるものではありません。本格的な英語力を身につけていくための「敷居」はすでに超えていると言えます。まだ800点には届かないという人も、この「敷居」を超えることをまずは目標にして学習に励んでください。

ライター:長坂ヒロ(更新)/1億人の英語編集部(原文)
  • この記事を書いた人
長坂 ヒロ

長坂 ヒロ

▼略歴
WEBライター/翻訳家(英語・ポルトガル語)として活動中。年齢は30代前半。
東京外国語大学外国語学部を卒業後、旅行会社にて海外商品企画や海外添乗業務を担当。学生時代には、大手予備校の英語個別指導講師や答案添削業務を経験。

オーストラリア/ニュージーランドに計1年半在住歴もあり、現在は信州・長野県へ移住。

趣味は海外旅行。渡航経験は約30カ国。年に2~3ヵ月は海外旅行へ。

英語は肩ひじ張って勉強するものではなく、楽しく習得していくもの。英語学習を楽しく継続する方法や、ネイティブが日常的によく使う表現などを発信していきます。

【ブログ】
旅するカモノハシ~「自由ですけどなにか?」~

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