褒めるところから始める!フィードバックや謝罪で失敗しない英語圏の「気遣い」ルール
英語圏のビジネスコミュニケーションにおいて最も重要なのは、「相手のプロフェッショナルとしての自尊心を守りながら、建設的な解決策を提示すること」 批判的な意見はポジティブな言葉で挟む「サンドイッチ・フィードバック」を活用し、過度な謝罪(I’m sorry)ではなく感謝(Thank you)や解決策へのコミットメントに変換することで、信頼関係を崩さずに成果を上げることができます。

グローバルな環境で仕事をしていると、英語力そのものよりも「伝え方」の違いに戸惑うことはありませんか?
特に、部下や同僚に修正を依頼するフィードバックの場面や、ミスをした際の謝罪の場面では、日本的な感覚のまま対応すると誤解を招くことがあります。
「良かれと思って謙遜したのに、自信がないと思われた」「厳しく指摘したら、相手がひどく落ち込んでしまった」
こうしたすれ違いを防ぐために、英語圏のビジネスシーンで不可欠な「気遣い」のルール、特に「サンドイッチ・フィードバック」と「謝罪の変換」について解説します。
1. 英語ビジネスのマナー:なぜ「褒める」から始めるのか?
日本のビジネス現場では、改善点を指摘する際、単刀直入に「ここは直してください」「これがダメです」と伝えることが、「効率的」かつ「誠実」とされることがあります。しかし、英語圏、特に欧米のビジネス文化において、これはあまり好まれません。
信頼を壊さないための「クッション」
英語圏では、相手の仕事や人格(自尊心)を尊重することが非常に重視されます。いきなりネガティブな指摘をすることは、相手への攻撃と受け取られかねません。
そこで重要になるのが、「ポジティブな評価」から入り、相手の聞く態勢を整えるというマナーです。これは単なるお世辞ではなく、「あなたの貢献や能力は認めている」というリスペクトの表明であり、その後の厳しい指摘を受け入れてもらうための土台作りなのです。
2. 批判を挟んで伝える「サンドイッチ・フィードバック」
最も有名な手法が、ネガティブな内容(改善点)をポジティブな内容で挟む「サンドイッチ・フィードバック(Sandwich Method)」です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. パン(上) | まずは良かった点、感謝、努力を具体的に褒める。 |
| 2. 具材(中身) | 改善してほしい点、問題点、建設的な批判を伝える。
(ここが本題) |
| 3. パン(下) | 今後の期待、信頼の言葉、全体のポジティブな総括で締める。 |
この手法を使うことで、相手は「自分は評価されている」という安心感を持って、改善点に向き合うことができます。
実践!サンドイッチ・フィードバックの例文
例えば、部下の資料作成にミスがあり、修正を依頼する場合を見てみましょう。
【例文】
Great job on gathering all the data so quickly. I really appreciate your effort.
データをこんなに早く集めてくれて素晴らしいよ。君の努力には本当に感謝している。
However, I noticed a few discrepancies in the financial section. Could you double-check those figures?
ただ、財務のセクションにいくつか矛盾があることに気づいたんだ。数字を再確認してもらえるかな?
Once that’s fixed, this report will be perfect for the client meeting. Keep up the good work.
そこが修正されれば、クライアントとの会議に向けた完璧なレポートになるよ。この調子で頼むね。
このように、「褒める(Good)→ 指摘(Constructive)→ 励ます(Positive)」の流れを作ることで、相手のモチベーションを下げずに修正を促すことができます。
3. 日本人が陥る「I’m sorry」の罠と正しい謝罪法
次に、多くの日本人が失敗しやすい「謝罪」についてです。私たちは会話の潤滑油として「すみません(I’m sorry)」を使いがちですが、英語圏のビジネスにおいては注意が必要です。
「Sorry」は自分の非能力を認めること?
英語の “I’m sorry” は、文脈によっては「私に全面的に非があります」「私の能力不足です」という意味合いで受け取られることがあります。不必要な場面で謝りすぎると、「自信がない人」「責任能力がない人」というレッテルを貼られてしまうリスクがあるのです。
もちろん、明らかな過失がある場合は謝罪が必要ですが、ビジネス上のちょっとした遅れや、相手に手間をかけた程度のことであれば、謝罪よりも「感謝」を伝える方がポジティブでプロフェッショナルな印象を与えます。
謝罪を「感謝」に変換するテクニック
ネガティブな状況をポジティブな「感謝」に変換するだけで、印象は劇的に変わります。
【例文】(遅刻した時)
× I’m sorry I’m late.
遅れてごめんなさい。
○ Thank you for waiting.
待っていてくれてありがとう。
【例文】(説明が分かりにくかった時)
× I’m sorry, my explanation was bad.
ごめんなさい、私の説明が悪かったです。
○ Thank you for asking clarification. Let me explain it differently.
確認してくれてありがとう。別の方法で説明しますね。
このように、「待たせて悪いことをした」という罪悪感(Sorry)ではなく、「待ってくれた相手の寛容さ」への感謝(Thank you)にフォーカスすることで、対等で前向きな関係を維持できます。
4. 相手を尊重するための英語表現の工夫
フィードバックや意見交換の際、英語には「直接的な表現を避ける」ためのクッション言葉(Softener)が数多く存在します。これらを使いこなすことも、重要なビジネススキルです。
例えば、相手の意見に反対する場合、”I don’t agree.”(賛成しません)と言うと角が立ちます。
【例文】
I see your point, but I have a slightly different perspective.
おっしゃることは分かりますが、私は少し異なる見解を持っています。
また、依頼をする際も命令形ではなく、疑問形や仮定法を使います。
【例文】
It would be great if you could send it by tomorrow.
明日までに送っていただけると大変助かります。
こうした表現は、決して遠回しなわけではなく、相手をプロとして尊重しているからこその丁寧さの表れです。
まとめ:英語ビジネスは「心の姿勢」で決まる
英語圏でのビジネス成功の鍵は、単語力や文法力以上に、相手の文化背景を理解したコミュニケーションにあります。
批判する時こそ相手の良さを認め(サンドイッチ・フィードバック)、ミスをした時こそ萎縮せずに解決に向けた姿勢を見せる(謝罪から感謝へ変換する)。この「心の姿勢」を変えるだけで、あなたの信頼度は大きく向上するはずです。
この記事の要約とポイント
本記事では、英語圏のビジネス文化におけるフィードバックと謝罪のルールについて解説しました。
- サンドイッチ・フィードバックの実践:厳しい指摘は、必ずポジティブな評価(感謝や称賛)で挟んで伝える。
- I’m sorryの乱用を避ける:過度な謝罪は自信の欠如と見なされる。「Sorry」を「Thank you」に言い換える意識を持つ。
- 自尊心への配慮:相手をプロフェッショナルとして尊重し、クッション言葉を用いて建設的な議論を行う。
明日からのメールや会議で、まずは「Thank you」から始めることを意識してみましょう。






