「Pardon?」はもう卒業。聞き取れないストレスを自信に変える、スマートな「逆質問」の技術
英語のコミュニケーションにおいて、聞き取れないことは決して恥ではありません。最も避けるべきは「分かったふりをして笑ってやり過ごすこと」です。単なる「Pardon?(もう一度言ってください)」の繰り返しを卒業し、「どこまで理解でき、どこが不明なのか」をピンポイントで伝える逆質問の技術を身につけることで、ビジネスでも日常会話でも、あなたの信頼性と知性は飛躍的に高まります。

なぜ「聞き取れない」と焦ってしまうのか?
英語学習者の多くが、会話中に相手の言葉が聞き取れないと「自分の実力不足だ」と自分を責め、パニックに陥ってしまいます。特に日本人の場合、周囲の空気を読む文化が強いため、会話の流れを止めることに罪悪感を抱きがちです。
「全部聞き取らなきゃ」という強迫観念
私たちは、一言一句を完璧に聞き取らなければ返答してはいけない、と考えがちです。しかし、ネイティブスピーカー同士であっても、雑音や滑舌、文脈の欠如によって聞き返すことは日常茶飯事です。コミュニケーションは100%の聴解力ではなく、不明点を補い合う共同作業であると認識を変えることが、脱・初心者への第一歩です。
愛想笑いは一番の「マナー違反」
聞き取れなかった際に、つい愛想笑いをして「Yes, yes…」と流してしまうことはありませんか?これはビジネスコミュニケーションにおいて最もリスクが高い行為です。後に大きな誤解を生むだけでなく、相手は「自分の話を聞いていない」あるいは「理解する気がない」と感じ、あなたへの信頼を損なってしまいます。分からないときに「分からない」と言える勇気こそが、真の誠実さです。
「Pardon?」の使いすぎに注意!
聞き返す際の代名詞ともいえる「Pardon?」や「Sorry?」。もちろん間違いではありませんが、これらには隠れたリスクがあります。
「Pardon?」の多用が相手に与える印象
相手が長い文章を話した後に、ただ一言「Pardon?」とだけ返すと、相手は「えっ、最初から全部言い直さなきゃいけないの?」と心理的な負担を感じてしまいます。会話のキャッチボールを止めてしまい、相手を疲れさせてしまうのです。
知性を保ちつつ聞き返すための基本姿勢は、「どこまで分かったか(何が分からなかったか)」を具体的に示すことです。以下の表で、聞き返し方のレベルを確認してみましょう。
| レベル | 聞き返し方 | 相手に与える印象 |
|---|---|---|
| 初級 | Pardon? / Sorry? | とりあえず聞き返している。全部言い直す必要がある。 |
| 中級 | Could you say that again? | 丁寧だが、依然として全文の繰り返しを求めている。 |
| 上級(スマート) | Sorry, who did you say? | 「誰」が不明か明確。相手は単語一つ答えるだけで済む。 |
【実践】ピンポイントで聞き返す4つのテクニック
状況に応じて使い分けられる、具体的でスマートなフレーズを紹介します。これらを活用することで、英語の聞き返し方が劇的にスムーズになります。
1. 単語だけ聞き返す
文章の最後や、特定の重要なキーワードだけが抜け落ちた場合に有効です。
【例文】
Sorry, what was the last word?
日本語訳:すみません、最後の単語は何でしたか?
2. 一部をオウム返しする(5W1Hを活用)
分かった部分までを伝え、不明な部分を疑問詞に置き換える高度なテクニックです。相手は不足している情報だけをピンポイントで補足すればよいため、非常に効率的です。
【例文】
You said you went to… where?
日本語訳:…に行ったとおっしゃいましたか?どこですか?
【例文】
The meeting starts at… when?
日本語訳:会議が始まるのは……いつですか?
3. 意味を確認する(定義の逆質問)
音は聞こえたけれど、その単語や専門用語の意味が分からない場合に使います。特にビジネスシーンでは、曖昧なままにしない姿勢が評価されます。
【例文】
By “ASAP”, do you mean by the end of today?
日本語訳:「できるだけ早く」というのは、今日中ということでしょうか?
4. ゆっくりをお願いする
スピードが速すぎて全くついていけない場合は、正直にリクエストしましょう。このとき、「理解したいから」というポジティブな理由を添えるのがコツです。
【例文】
Could you say that again a bit more slowly? I want to make sure I understand.
日本語訳:理解を確実にしたいので、もう少しゆっくり言っていただけますか?
聞き取れなかった後の「会話のつなぎ」
聞き返して教えてもらった後、そのまま会話を終わらせてはいけません。スムーズなコミュニケーションを継続するためのクロージングが必要です。
感謝を伝える
教えてくれたことに対して、短く感謝を述べましょう。
【例文】
Thanks for clarifying.
日本語訳:説明(明確化)してくれてありがとう。
自分の理解を要約して確認する
最後に「自分の理解が合っているか」を確認できれば完璧です。これにより、聞き返しが単なる「遮り」ではなく、深い理解のための「投資」に変わります。
【例文】
So, you’re saying that we need to reschedule the launch, right?
日本語訳:つまり、発売日を再調整する必要があるということですね?
まとめ:コミュニケーションは「共同作業」
英語を話す上で大切なのは、完璧な「耳」を持つことではありません。「分からないことを正直に、かつスマートに解決できる力」こそが、真のコミュニケーション能力です。たとえ一度で聞き取れなくても、今回紹介したフレーズを駆使してピンポイントで逆質問ができれば、相手はあなたを「仕事ができる、誠実なパートナー」として認識するでしょう。
【今回のポイント】
- 「全部聞き取らなきゃ」を捨てる: コミュニケーションは双方の歩み寄り。
- 「Pardon?」一辺倒からの脱却: 相手に言い直しの負担をさせない工夫を。
- 5W1Hでピンポイントに聞く: “What?”, “Where?”, “When?” を文末に添えるだけでスマートに。
- 理解を言語化する: 最後に要約して確認することで、信頼関係を強固にする。
今日から、聞き取れないときの焦りを「知的な逆質問」に変えて、より深い英会話を楽しんでください。






