
英語が聞き取れない原因は発音にあった?日本人がつまずく5大弱点と克服法
英語が聞き取れない最大の原因は、実は「自分がその音を正しく発音できないから」です。人間の脳は、自分が知らない音、発音できない音を正しく認識しにくいという特性があります。この記事では、L/R、TH、can/can’tなど、多くの日本人がつまずきやすい5つの「音の壁」を乗り越え、リスニング力と発音を劇的に改善する具体的なトレーニング法を徹底解説します。

なぜあなたの英語は聞き取れないし、通じないのか?
「単語も文法も一通り勉強したはずなのに、ネイティブの会話が全く聞き取れない…」「勇気を出して話してみても、何度も聞き返されて自信をなくした…」こんな経験はありませんか?
多くの日本人学習者が「リスニング力がないからだ」「語彙力が足りないからだ」と考えがちですが、問題の根っこはもっと深い場所にあるかもしれません。それが、「発音」です。
私たちは、学校教育で「カタカナ英語」というフィルターを通して英単語の音を覚えてきました。しかし、実際の英語の音は、カタカナとは似ても似つかないものがほとんどです。自分が思い込んでいる音と、実際にネイティブが発している音に大きなギャップがあるため、脳がそれを同じ単語として認識できず、「聞き取れない」という現象が起こるのです。
逆に言えば、自分が正しく発音できるようになれば、脳はその音を正しく認識できるようになり、リスニング力は飛躍的に向上します。この記事では、英語が聞き取れない根本原因である日本人の発音の弱点を克服し、「通じる発音」と「聞き取れる耳」を同時に手に入れるための具体的な方法をご紹介します。
日本人がつまずく「音の壁」5選と具体的な克服トレーニング
ここからは、特に多くの日本人が苦手とする5つの「音の壁」と、その具体的な乗り越え方を解説します。一つひとつ、自分の口と耳で確認しながら読み進めてみてください。
壁①:永遠の課題「L」と「R」- 舌の動きが全てを決める
まず最初の壁は、誰もが一度は悩む `L` と `R` の違いです。これを曖昧にしていると、`rice`(米)を頼んだつもりが `lice`(シラミ)に聞こえてしまう、なんて恐ろしい事態も起こりかねません。ポイントは舌の使い分けです。
正しい発音のコツ
`L` と `R` の発音の違いは、舌の先の位置だけで決まります。以下の表で違いを明確にイメージしましょう。
L の発音 | R の発音 | |
---|---|---|
舌の先の位置 | 上の歯の付け根の裏側にしっかりつける。「ル」と発音する瞬間に舌を弾く。 | 口の中のどこにもつけない。舌を少し奥に引き、喉の奥から「ゥ」と唸るように音を出す。 |
口の形 | 日本語の「ラリルレロ」に近い形でOK。 | 唇を少し丸めて突き出すと音が出やすい。 |
練習単語 | light, play, glass, feel | right, pray, grass, fear |
この英語のLとRの違いを意識して、鏡を見ながら舌の動きを確認するのが効果的です。
克服トレーニング
LとRが含まれる単語のペア(ミニマルペア)を繰り返し発音してみましょう。`light` と `right`、`collect` と `correct` など、意味が全く異なる単語で練習することで、音の違いへの意識が高まります。
壁②:日本語にはない音「TH」- 舌を軽く噛む勇気
`think` や `this` に含まれる `th` の音。これを `s` や `z` の音で代用してしまうと、途端にカタカナ英語っぽく聞こえてしまいます。正しい発音のコツは「舌を軽く噛む」ことです。
正しい発音のコツ
- 無声音の `th` (例: think, three, path): 舌先を上下の歯で軽く挟み、その隙間から「スー」と息を漏らします。声帯は震わせません。
- 有声音の `th` (例: this, that, mother): 無声音と同じ舌の位置で、今度は「ズー」と声を出しながら(声帯を震わせながら)息を漏らします。
日本人は舌を噛むことに抵抗があるかもしれませんが、思い切ってやってみましょう。ネイティブは強く噛んでいるわけではなく、軽く触れさせているだけです。
克服トレーニング
`think` (考える) と `sink` (沈む)、`three` (3) と `free` (自由な) のように、`s` や `f` の音と `th` の音を交互に発音し、違いを体感する練習が有効です。
【例文】
I think I saw three of them.
日本語訳:私は彼らのうち3人を見たと思います。
壁③:聞き分け最難関「can」と「can’t」- 決め手は音の質と強さ
「`can` と `can’t` の聞き分けができない」という悩みは非常に多いです。肯定か否定かで意味が真逆になるため、これは死活問題。実はネイティブは、文脈だけでなく「音の質・強さ・長さ」で判断しています。
聞き分けのコツ
- can (肯定): 文中では非常に弱く、短く、曖昧に発音されることが多いです。「キャン」ではなく「クン」や「クェン」のように聞こえます。母音は曖昧母音の `/kən/` に近くなります。
- can’t (否定): 伝えたい重要な部分なので、強く、長く、はっきりと発音されます。「キャーン(ト)」のように聞こえ、母音は口を「エ」の形に開く `/kænt/` の音です。最後の `t` の音はほとんど聞こえないことも多いですが、その直前で音がプツッと切れる感覚があります。
つまり、はっきり「キャン」と聞こえたら、それは `can’t` の可能性が高いのです。この `can` `can’t` 聞き分けの法則を知るだけで、リスニングが楽になります。
克服トレーニング
自分で `can` は弱く速く、`can’t` は強く長く発音する練習を繰り返しましょう。`I can do it.` (弱く) と `I can’t do it.` (強く) を交互に言う練習が効果的です。
壁④:似て非なる母音 – 「sit」と「seat」
日本語の母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つですが、英語には20以上の母音があると言われています。特に日本人が苦手なのが、短い「イ」(`/ɪ/`)と長い「イー」(`/iː/`)の区別です。
正しい発音のコツ
- 短い `i` (例: sit, ship, it): 日本語の「イ」と「エ」の中間のような音。口をあまり横に開かず、リラックスして短く「イッ」と発音します。
- 長い `ee` (例: seat, sheep, eat): 口を横にしっかり引いて、にっこり笑うように「イー」と長く伸ばします。
この違いを意識しないと、「座ってください (`sit`)」が「席 (`seat`)」に聞こえたり、「船 (`ship`)」が「羊 (`sheep`)」に聞こえたりしてしまいます。
克服トレーニング
`sit` / `seat`, `live` / `leave`, `bitch` / `beach` など、母音の長さで意味が変わる単語ペアで発音練習をしましょう。自分の声を録音して聞き比べてみるのがおすすめです。
壁⑤:ブツ切り英語からの脱却 – 「リエゾン」で滑らかに
ネイティブの英語が速くて聞き取れない大きな原因が「リエゾン(リンキング)」、つまり音の連結です。単語を一つひとつ発音するのではなく、繋げて滑らかに発音するため、知っている単語でも全く違う音に聞こえるのです。
リエゾンの主なパターン
- 子音 + 母音: `check it out` → `チェケラウッ`
- 子音 + 子音: `good day` → `グッデイ` (前の音が消えかける)
- 母音 + 母音: `go away` → `ゴーワウェイ` (`w` のような音が挟まる)
英語を滑らかに話すためには、このリエゾンを理解し、自分でも実践することが不可欠です。
克服トレーニング
一番効果的なのはシャドーイングです。シャドーイングとは、英語音声を聞きながら、少し遅れて影(シャドー)のように真似して発音する練習法です。洋楽の歌詞を見ながら一緒に歌ってみるのも、楽しくリエゾンを学ぶ良い方法です。
【例文】
Not at all.
日本語訳:全く気にしません。(発音は「ノラロー」のように繋がる)
発音とリスニングを同時に鍛える最強トレーニング法
これまで紹介した弱点を総合的に克服し、本物の「英語耳」と「伝わる発音」を手に入れるためには、日々のトレーニングが欠かせません。特におすすめの3つの方法をご紹介します。
- シャドーイング: リエゾンだけでなく、英語特有のリズムやイントネーションも丸ごとコピーできる最強の練習法。1日10分でもいいので、毎日続けることが重要です。
- ディクテーション(書き取り): 聞き取った英語を文字に書き起こす練習。自分がどの音を聞き間違えているのか、どの部分が聞き取れていないのかが明確になります。
- 発音矯正アプリの活用: 『ELSA Speak』などのアプリは、AIがあなたの発音をネイティブと比較し、どこをどう直せばいいか具体的にフィードバックしてくれます。客観的な指標があると、効率的に弱点を修正できます。
まとめ:正しい発音は自信の源泉。今日から音を変えよう!
今回は、多くの日本人学習者が抱える「英語が聞き取れない、通じない」という悩みの根本原因が「発音」にあることを解説し、具体的な5つの弱点とその克服法をご紹介しました。「聞き取れないのは発音ができないから」という事実は、裏を返せば「正しく発音できるようになれば、聞き取れるようになる」ということです。
発音の学習は、一見地味で遠回りに見えるかもしれません。しかし、これはリスニング力とスピーキング力の両方を同時に向上させる、最も効果的で効率的な投資です。正しい音を身につけることで、あなたの英語は劇的に変わり、コミュニケーションに自信が持てるようになるでしょう。
この記事のポイント
- 英語が聞き取れない最大の原因は、自分がその音を正しく発音できないことにある。
- 日本人が特に苦手なのは「L/R」「TH」「can/can’tの区別」「母音の長短」「リエゾン」の5つの壁。
- それぞれの壁には明確な克服法があり、舌の位置や口の形、音の強弱を意識したトレーニングが有効。
- ミニマルペアでの練習や、シャドーイング、ディクテーションが発音とリスニングを同時に鍛える上で非常に効果的。
- 正しい発音を身につけることが、英語学習のブレークスルーに繋がり、自信を持ってコミュニケーションをとるための鍵となる。