
「ちょっと待って」会話をスムーズにする英語の「つなぎ言葉(フィラー)」活用法
日常会話で、言葉に詰まったり、次に何を言うか考えたりする時、無意識に「えーっと」「あのー」といった言葉を使っていることはありませんか?これらは「つなぎ言葉」や「フィラー」と呼ばれ、会話を自然に進めるための潤滑油のような役割を果たします。

実は英語にも、日本語の「えーっと」と同じように使われる「フィラー (Filler Words)」がたくさん存在します。 これらを上手に使えるようになると、まるでネイティブスピーカーのように自然でスムーズな会話ができるようになります。フィラーは単に間を埋めるだけでなく、思考時間を稼いだり、表現を和らげたりする機能も持っています。
この記事では、「ちょっと待って」という一時停止の表現以外にも使える、多彩な英語のフィラーを紹介します。会話の様々な場面で役立つフィラーの種類、具体的な使い方、そして使う上でのメリットや注意点まで、例文を交えながら詳しく解説していきます。これにより、学習者はより幅広い状況で会話の流れをコントロールする手段を得ることができます。
なぜフィラーが大切?英語の「つなぎ言葉」が持つ4つのメリット
英語のフィラーは、単に間を埋めるだけでなく、会話をより豊かに、そしてスムーズにするための多くのメリットがあります。
- 自然な会話の流れを作り出す
フィラーを適切に使うことで、会話が途切れることなく、より自然なリズムで話せるようになります。沈黙が続く気まずさを避け、相手とのコミュニケーションを円滑にします。 これは、特に会話のテンポを重視する英語のコミュニケーションにおいて重要な要素です。
- 考える時間を稼ぐ
次に何を言うか、どんな言葉を選ぶか考える時間が必要な時、フィラーは非常に役立ちます。「えーっと…」と考えながらも、会話の流れを止めずに済みます。 この機能は、特に即興性が求められる会話において、話者が落ち着いて次の言葉を選ぶための貴重な時間を提供します。
- 表現を和らげる
断定的な言い方を避けたい時や、少し言いにくいことを伝える際に、フィラーを挟むことで表現を和らげ、相手に与える印象を柔らかくすることができます。 これは、相手への配慮を示し、より円滑な人間関係を築く上で役立ちます。特に、日本語話者が重視する傾向のある調和の取れたコミュニケーション(和)にも通じる使い方と言えるでしょう。
- 相手の理解度を確認する
「you know?」や「right?」のようなフィラーは、相手が話についてきているか、同意しているかなどを軽く確認するのに使えます。 これにより、一方的な会話になるのを防ぎ、相手との共感を促し、よりインタラクティブなコミュニケーションを促進します。
これらのメリットを理解すると、フィラーが単なる「口癖」や「余計な言葉」ではなく、高度なコミュニケーション戦略の一部であることがわかります。話者の思考を助けるだけでなく、聞き手との関係性や会話全体の雰囲気を調整する能動的な役割を担っているのです。
【シーン別】これを押さえれば安心!定番フィラー活用集
ここでは、様々な会話のシーンで役立つ代表的な英語フィラーを、使い方と例文と共に紹介します。例文のフォーマットは以下の通りです。
【例文】
例文をここに書く
日本語訳
1. 言葉に詰まった時・考えを巡らせている時
会話中に言葉がすぐに出てこなかったり、考えをまとめたりする際に使えるフィラーです。
-
“Um / Uh / Er” (あー、えーっと)
最も基本的なフィラーで、何かを思い出そうとしている時や、次に何を言うか考えている時に無意識に出る音に近いものです。 これらは、話が途切れてしまうのを防ぎ、相手に「今考えています」というサインを送る役割があります。
【例文】
A: What are you having? B: Ummm……, I will have a latte.
A: 何にしますか? B: えぇ~っと、、、ラテにします。【例文】
“Um, er, I uh thought the project was due tomorrow, not today.”
「えーっと、あのー、そのプロジェクトは今日ではなく明日が締め切りだと思っていました。」 -
“Well…” (ええと、さて、そうですね)
文頭で使われることが多く、少し考えをまとめたい時や、発言を始める前のクッションとして便利です。相手の言ったことに対して、少し間を置いて返答するニュアンスも出せます。 フォーマルな場面でも比較的受け入れられやすいフィラーの一つです。
【例文】
A: Have you decided on your holiday for next year? B: Well……, I will have to see if I will have spare money for it.
A: 来年の休暇、決めた? B: え~と。お金に余裕があるかどうかみないとなぁ。【例文】
“Well, I guess $20 is a good price for a pair of jeans.”
「ええと、まあ、ジーンズ1本20ドルならお買い得かな。」 -
“Let me see…” / “Let’s see…” (ええと、そうですね、どれどれ)
文字通り「私に考えさせて」という意味合いですが、深く考え込まずに口癖のように使われることも多い表現です。何かを確認したり、思い出したりする際に使います。
【例文】
A: What time is convenient for you? B: Let me see. How about meeting at the station at about 8pm?
A: 何時くらいが都合いい? B: えぇ~と、じゃ駅に8時くらいはどう? -
“So…” (それで、だから、さて)
話を切り出す時や、前の話を受けて次の話題に移る時、または結論を言う前など、幅広く使えます。 文の冒頭で使われることが多く、会話の区切りや転換を示すのに役立ちます。
【例文】
So, what do you want to do next?
さて、次に何をしたいですか?
2. 表現を和らげたい時・正確でないことを伝えたい時
断定的な響きを避けたり、おおよそのことを伝えたりする際に便利なフィラーです。
-
“Like…” (なんか、~みたいな、~っぽい)
日本語の「なんか~」「~みたいな感じ」に似ており、言葉を和らげたり、正確な言葉が思い浮かばない時、または若者言葉として口癖のように使われたりします。 ネイティブの日常会話では非常によく耳にしますが、多用すると稚拙な印象を与える可能性もあるため注意が必要です。 また、おおよその数量や状況を示す際にも使われます。
【例文】
My neighbor has, like, ten dogs.
うちの隣人、犬を10匹くらい飼ってるんだ。【例文】
He’s, like, always late for everything.
彼、なんかいつも何にでも遅刻してくる感じなんだよね。 -
“Kind of…” / “Sort of…” (なんか、ちょっと、ある意味)
「何となく」「どちらかというと」「~みたいなもの」といった、断定を避けたい時や曖昧な表現をしたい時に使います。 直接的な表現を和らげる効果があります。
【例文】
It’s kind of cold in here, isn’t it?
ここ、なんかちょっと寒くない?【例文】
A: Did you enjoy the movie? B: Kind of. It wasn’t what I expected.
A: 映画楽しかった? B: まあね。期待してたのとはちょっと違ったかな。
3. 言い換え・補足・強調したい時
自分の発言をより正確に伝えたり、特定のポイントを強調したりする際に役立つフィラーです。
-
“I mean…” (つまり、ていうか、いや)
自分の言ったことを訂正したり、補足説明を加えたり、意図をより明確に伝えたい時に使います。「私が言いたいのは~」というニュアンスです。 前の発言を修正したり、より深い意味を説明したりする際に便利です。
【例文】
This is my sister. I mean, my sister-in-law.
妹です。というか、義理の妹です。【例文】
The movie was great. I mean, the acting was fantastic, but the story was a bit weak.
映画は素晴らしかったよ。つまり、演技は最高だったんだけど、ストーリーは少し弱かったかな。 -
“Actually…” (実は、実際には、やっぱり)
相手が予想していないような意外な事実を伝えたり、自分の意見を強調したり、あるいは丁寧に反対意見を述べたりする際に使えます。 会話に少し驚きや新たな情報をもたらす効果があります。
【例文】
Actually, I’ve already seen that movie.
実は、その映画はもう観たんだ。【例文】
I’m British. Actually, I don’t like tea.
私はイギリス人です。実は紅茶が好きじゃありません。 -
“Basically…” (要するに、基本的には)
複雑な話や長い説明を要約して、最も重要なポイントを伝えたい時に使います。 話を簡潔にまとめ、聞き手の理解を助ける働きがあります。
【例文】
Basically, we just need to finish this report by Friday.
要するに、金曜日までにこのレポートを終わらせればいいんだ。【例文】
She kept complaining about him. Basically, he didn’t communicate enough with her.
彼女、いつも彼に不満だったの。要するに、彼は彼女と十分にコミュニケーションとってなかったのよ。 -
“You know…” (あのね、ほら、~じゃない?)
相手も知っているはずの情報について話す時や、共感を求めたい時、または言葉がすぐに出てこない時に使います。文末につけて「~でしょ?」と同意を求めるニュアンスでも使われます。 聞き手との共通認識を確認したり、親密さを演出したりする効果があります。ただし、使いすぎると相手をうんざりさせる可能性もあるため注意が必要です。
【例文】
It was a really tough day, you know?
本当に大変な一日だったんだよ、わかる?【例文】
She is, you know, always late.
彼女さ、ほら、いつも遅刻してくるんだよね。
4. 相手に同意を求めたい・確認したい時
自分の意見や感情を伝えた後、相手の反応を確かめたい時に使います。
-
“Right?” (でしょ? そうだよね?)
自分の言ったことに対して、相手に軽い同意や確認を求める時に文末につけます。 会話をリズミカルにし、相手の参加を促す効果があります。
【例文】
This cake is delicious, right?
このケーキ、美味しいよね?
5. 言葉が出てこない時
特定の単語や表現が思い出せない時に、会話を途切れさせずに間を繋ぐフィラーです。
-
“What do you call it?” / “What’s it called?” (あれなんて言うんだっけ?)
物の名前や特定の表現が思い出せない時に使います。これを使うことで、沈黙を避け、相手に助けを求めることもできます。
【例文】
I need to buy one of those… you know… what do you call it? The thing you use to open wine bottles.
あれを買わないといけないんだ…ほら…あれなんて言うんだっけ?ワインのボトルを開けるのに使うやつ。 -
“How should I put it?” (なんて言えばいいかな、どう表現しようかな)
言いたいことはあるけれど、適切な言葉が見つからない時や、慎重に言葉を選びたい時に使います。少しネガティブなことや、複雑なことを伝える前の前置きとしても役立ちます。 相手に配慮しつつ、自分の考えを整理する時間を与えてくれます。
【例文】
The movie was, how should I put it? A bit of a disappointment.
その映画はなんて言えばいいかな、少しがっかりだったよ。
これらのフィラーを機能やシーン別に理解することで、学習者は実際の会話でどのフィラーが適切かを判断しやすくなります。単に単語を覚えるだけでなく、それぞれのフィラーが持つニュアンスやコミュニケーション上の役割を把握することが、効果的な使用への鍵となります。
よく使われるフィラー一覧 (Common Filler Words Quick Guide)
フィラー (Filler) | 主な日本語訳 (Main Japanese Eq.) | 主な機能 (Main Function) | 簡単な例文 (Simple Example with Translation) |
---|---|---|---|
Well… | ええと、さて | 考え中、発言の開始 | Well, I think it’s a good idea. (ええと、それは良い考えだと思います。) |
Um / Uh / Er… | あー、えーっと | ためらい、言葉を探している | I need, um, a pen. (ええと、ペンが必要です。) |
Like… | なんか、~みたいな | 例え、強調、口癖 | It was, like, so amazing! (なんか、すごく素晴らしかったです!) |
You know… | あのね、ほら | 共感、確認、言葉の補足 | That cafe, you know, the one on Oak Street? (あのカフェ、ほら、オークストリートにあるやつ?) |
I mean… | つまり、ていうか | 言い換え、意図の明確化 | It’s a bit difficult. I mean, it’s not impossible. (少し難しいです。つまり、不可能ではありません。) |
Actually… | 実は、実際には | 意外な事実、強調 | Actually, I’ve already finished it. (実は、もう終わらせました。) |
So… | それで、だから | 話題の転換、結論 | So, what shall we do now? (それで、今何をしましょうか?) |
Basically… | 要するに | 要約、基本事項の提示 | Basically, it’s a simple task. (要するに、簡単な作業です。) |
Let me see… | ええと、そうですね | 考え中、確認 | Let me see… I think I have his number. (ええと…彼の電話番号、持っていると思います。) |
Kind of / Sort of… | なんか、ちょっと | 曖昧な表現、断定を避ける | I’m kind of tired today. (今日はちょっと疲れているんだ。) |
Right? | ~でしょ? | 同意を求める | It’s a beautiful day, right? (いい天気だよね?) |
やみくもな使用はNG?フィラーを使う上での注意点
フィラーは英会話をスムーズにする便利なツールですが、使い方を間違えると逆効果になることも。ここでは、フィラーを使う上での注意点を押さえておきましょう。
- 使いすぎは「自信がない」「話が分かりにくい」印象に
フィラーをあまりにも頻繁に使うと、聞いている側は「自信がないのかな?」「話の要点が掴みにくい」と感じてしまうことがあります。 特に “um” や “uh”、”like” の連発は、稚拙な印象を与えかねません。 話の内容が不明瞭になり、説得力が低下する可能性も指摘されています。
- フォーマルな場では控えめに
友人とのカジュアルな会話では問題ないフィラーも、ビジネスシーンや公式なプレゼンテーションなど、フォーマルな場面では使用を控えるか、”well” や “so” のように比較的許容されやすいものに留めるのが賢明です。 不適切な場面でのフィラーの使用は、プロフェッショナルでないという印象を与えかねません。
- ネイティブがよく使うフィラーの落とし穴:”like” や “you know” の多用に注意
ネイティブスピーカー、特に若い世代は “like” を非常によく使います。また、”you know” も頻繁に耳にするフィラーですが、これらを無意識に模倣して使いすぎると、かえって不自然に聞こえたり、相手に「本当に分かっているのかな?」と不安を与えたりすることがあります。 日本語の「なんか」と “like” の機能が似ているため、日本語話者が安易に “like” を多用してしまうケースが見られますが、英語では過度な使用がよりネガティブに捉えられることがある点を理解しておく必要があります。聞き手によっては、話者の知性や成熟度を低く評価する原因にもなり得ます。
これらの注意点を踏まえると、フィラーの使用は量よりも質、そして文脈への適合性が重要であることがわかります。単にネイティブスピーカーの話し方を表面的に真似るのではなく、それぞれのフィラーが持つ社会的な意味合いや、聞き手に与える印象を考慮することが、より洗練された英語コミュニケーションへの道となります。
まとめ:フィラーを味方につけて、もっと伝わる英会話へ
英語のフィラーは、決して「意味のない言葉」ではありません。会話をスムーズにし、相手とのコミュニケーションを円滑にするための大切なツールです。
種類や使い方、そして注意点を理解し、意識して練習することで、英会話はより自然で、生き生きとしたものになるでしょう。フィラーを効果的に使うことは、単に流暢に聞こえるだけでなく、相手への配慮を示し、より深いレベルでの意思疎通を可能にします。
最初は少し難しいかもしれませんが、まずは使いやすそうなものから少しずつ取り入れてみることが推奨されます。フィラーを上手に操れるようになれば、言いたいことがもっと伝わる、楽しい英会話が待っています。沈黙を恐れず、しかし必要な場面では適切なフィラーを選んで使うことで、コミュニケーションの質は格段に向上するはずです。