
なぜ日本人は英語の発音が苦手なのか?克服するための徹底ガイド
「英語を話せるようになりたいけれど、どうしても発音に自信がない…」と感じている日本人の皆さんは多いのではないでしょうか。ネイティブのような流暢な発音は難しいと感じるかもしれませんが、英語の発音が苦手なのは決して特別なこと

「英語を話せるようになりたいけれど、どうしても発音に自信がない…」と感じている日本人の皆さんは多いのではないでしょうか。ネイティブのような流暢な発音は難しいと感じるかもしれませんが、英語の発音が苦手なのは決して特別なことではありません。実は、日本語と英語の根本的な違いや、私たちが育ってきた学習環境が大きく影響しているのです。
この記事では、日本人が英語の発音に苦労する理由を言語学的な観点や日本語の音韻体系との違い、学習環境など、様々な角度から徹底的に解説します。さらに、具体的な克服方法も詳しくご紹介します。この記事を読むことで、あなたが英語の発音に対して抱いている疑問や悩みが解消され、自信を持って発音練習に取り組めるようになるはずです。さあ、一緒に発音の壁を乗り越えましょう!
なぜ日本人は英語の発音が苦手なのか?
日本人が英語の発音を苦手とする背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。ここでは、言語学的な観点、日本語の音韻体系との違い、そして私たちの学習環境という3つの側面から、その理由を探っていきましょう。
言語学的な観点から
日本語と英語は、文法構造だけでなく、音の体系(音韻体系)も大きく異なる言語です 。この根本的な違いこそが、私たち日本人が英語の発音に苦労する最大の理由と言えるでしょう。
日本語の音素の数と種類
英語は約44の音素を持つとされるのに対し 、日本語は約17の音素しかありません 。音素とは、言語の中で意味を区別する最小の音の単位のことです。例えば、英語の “cat” の /k/、/æ/、/t/ はそれぞれ異なる音素であり、一つでも変わると別の単語になります。日本語の音素数が少ないということは、英語の持つ豊富な音の種類に対応しきれないことを意味します。
特に、母音の数は大きく異なります。日本語の母音は「あ、い、う、え、お」の5つですが、英語は方言によって12〜20もの母音を持つと言われています 。この違いは、日本語話者が英語の微妙な母音の音を聞き分けるのを難しくする大きな要因となります 。
また、子音の数も英語の方が多く、日本語には存在しない子音もたくさんあります 。例えば、後ほど詳しく解説する /θ/ や /v/ のような音は、日本語の音韻体系には存在しません。
このように、日本語の音素数が少ないため、英語の複数の異なる音を日本語の単一の音で認識してしまう傾向があります。これが、英語の /r/ と /l/ の区別がつかないといった問題につながります 。また、英語の /v/ や /θ/ のような音は日本語に存在しないため、発音する際に別の近い音で代用してしまうのです 。
日本語の音節構造(モーラ)と英語の音節構造の違い
日本語と英語では、音のまとまり方、つまり音節構造も大きく異なります。日本語は主に「子音+母音」の組み合わせからなる開音節が基本で、語尾はほとんどが母音で終わります 。一方、英語は子音で終わる閉音節や、子音が連続する子音クラスターを多く含んでいます 。
さらに、日本語には「モーラ」という音の単位があります 。これは、音節とは少し異なる概念で、音の長さを表す単位として機能します。例えば、「きゃ」「きゅ」「きょ」のように、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」が付く音は、一つの音節ですが、二つのモーラとして数えられます。英語にはこのような概念はありません。
英語の子音クラスターや閉音節は、日本語の単純な音節構造に慣れている日本人にとって、発音の大きな壁となります。例えば、英語の “help” という単語は、日本語の音節構造に無理やり当てはめようとすると「ヘルプ」のように、本来ない母音を加えて発音してしまいがちです 。また、英語の語尾の子音を発音する習慣がないため、「book」を「ブク」のように、最後の /k/ の音を曖昧にしてしまうこともあります 。
英語に存在しない日本語の音、日本語に存在しない英語の音
日本語には、英語の /θ/、/ð/、/v/、/f/ のような摩擦音が存在しません 。特に /θ/ と /ð/ は、世界の言語の中でも比較的珍しい音であると言われています 。これらの音を発音するためには、舌や唇の新しい動きを習得する必要があります。
一方、日本語の「ん」の音は、後続の音によって発音が変化する特殊な音([N]など)ですが、これは英語の音韻体系には見られない特徴です 。
また、日本語の /r/ の音は、英語の /r/ と /l/ の中間の音として認識されることが多いです 。日本語には /l/ と /r/ の音の区別がないため、英語のこれらの音を聞いても同じように聞こえてしまうのです 。
日本語の音韻体系との違い
日本語と英語の音韻体系を比較すると、その違いはさらに明確になります。
特徴 | 日本語 | 英語 | 備考 |
---|---|---|---|
母音の数 | 5つ(あ、い、う、え、お) | 約12〜20(方言による) | 短母音、長母音、二重母音を含む |
子音の数 | 少ない | 多い | 摩擦音、破擦音の種類が多い |
摩擦音 | 少ない(/h/, /s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/ など) | 多い(/f/, /v/, /θ/, /ð/ を含む) | 日本語にない摩擦音が多い |
二重母音 | 基本的にない(会話では現れることもある ) | 多い | |
音節構造 | 主に子音+母音(開音節) | 子音で終わる音節(閉音節)、子音クラスターが多い | |
アクセント | 高低アクセント(ピッチアクセント) | 強勢アクセント(ストレスアクセント) | アクセントの位置が意味を左右することがある |
イントネーション | 文末の上げ下げなど、比較的パターンが少ない | 文の種類や感情によって大きく変化する | |
L/Rの区別 | なし(「ら行」の音は中間的な音 ) | あり(/l/ と /r/ の区別がある ) | |
THの音 | なし | あり(/θ/ と /ð/ の音がある ) | |
Vの音 | なし | あり(/v/ の音がある ) | |
曖昧母音(シュワ) | なし | あり(/ə/ の音がある ) | |
音の単位 | モーラ | 音節 |
この表からもわかるように、日本語と英語の音韻体系には多くの違いが存在します。これらの違いが、私たちが英語の発音に苦労する根本的な原因となっているのです。
母音の数と種類の違い
日本語の母音は5つとシンプルですが、英語には短母音、長母音、二重母音など、様々な種類の母音が存在します 。特に、/æ/(例:cat)、/ʌ/(例:cut)、/ɪ/(例:bit)、/ʊ/(例:book)、/ɜː/(例:bird)などの音は日本語にはないため、発音する際に戸惑うことが多いでしょう 。また、日本語の「う」の音は、英語の /u/ のように唇を丸めて発音するのではなく、唇をあまり動かさない [ɯ] 音であることも、英語の /u/ の発音を難しくする要因の一つです 。
さらに、英語には /eɪ/(例:cake)、/aɪ/(例:bike)、/oʊ/(例:go)のような二重母音が多くありますが、日本語には基本的に存在しません 。そのため、英語の二重母音を単母音のように発音してしまったり、二つの音に分けて発音してしまったりする傾向があります。
子音の数と種類の違い(特に摩擦音、破擦音)
英語には /f/, /v/, /θ/, /ð/, /s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/, /h/ など、多くの摩擦音がありますが、日本語の摩擦音は /h/, /s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/ など、比較的少ないです 。特に、/f/ や /v/ のように唇と歯を使う摩擦音や、/θ/ や /ð/ のように舌を歯の間に挟んで出す摩擦音は、日本語にはないため、習得に苦労する人が多いです 。
また、英語の /tʃ/(例:church)や /dʒ/(例:judge)のような破擦音も、日本語には厳密には存在しません 。日本語の「ち」や「じ」に近い音はありますが、英語の破擦音とは微妙に発音方法が異なります。
二重母音の有無
前述の通り、英語には多くの二重母音が存在しますが、日本語にはほとんどありません 。日本語の音は、一つ一つの母音をはっきりと発音する傾向があるため、英語の二重母音のように、音の途中で滑らかに変化する発音に慣れていないのです 。
アクセントとイントネーションの違い(高低アクセント vs. 強勢アクセント)
日本語は、単語の中の音の高低で意味を区別する高低アクセント(ピッチアクセント)を持つ言語です 。一方、英語は、単語の中の特定の音節を強く長く発音する強勢アクセント(ストレスアクセント)を持つ言語です 。日本語では、単語のどの音節もほぼ同じ強さで発音されるため、英語のような強弱のあるリズムを生み出すのは難しいと感じるでしょう 。
また、英語ではアクセントの位置が変わると、単語の意味が変わってしまうことがあります(例:「present」名詞と動詞でアクセントの位置が異なる)。このようなアクセントの概念は、日本語話者には馴染みが薄いものです 。
さらに、英語のイントネーションは、文の種類(疑問文、平叙文など)や話し手の感情によって大きく変化しますが、日本語のイントネーションは比較的平坦であると言われています 。英語では、文末だけでなく、文中の強調したい部分のイントネーションも重要になります。
学習環境の影響
私たちの英語学習環境も、発音の習得を難しくしている要因の一つと考えられます。
日本の英語教育における発音指導の現状(文法・読解重視)
日本の英語教育は、コミュニケーション能力の育成よりも、文法や読解に重点が置かれる傾向があります 。そのため、体系的な発音指導が十分に行われていない現状があります 。中学校や高校の英語の授業では、発音の練習は時間的な制約もあり、どうしても後回しにされがちです。また、英語を教える教師自身が必ずしもネイティブスピーカーではない場合も多く、正しい発音を生徒に教えることが難しいケースもあります 。
このような発音指導の不足は、生徒が英語の正しい音や発音方法を学ぶ機会を奪い、苦手意識を助長する原因となります。
カタカナ英語の影響
英語の単語をカタカナで表記し、発音する習慣(カタカナ英語)も、実際の発音とのずれを生じさせ、正しい発音の習得を妨げる大きな要因です 。カタカナは、英語の持つ多様な音を完全に再現できるわけではなく、どうしても日本語の音に近い音で代用してしまうため、本来異なる英語の音を同じように表記してしまうことがあります。例えば、「fly」と「fry」はどちらもカタカナでは「フライ」と表記されるため、発音する際に混同しやすくなります 。また、「L」と「R」の区別がつかないのも、カタカナ英語の影響が大きいと言えるでしょう。
カタカナ英語に慣れ親しんでいると、英語本来の音を意識しにくくなり、英語を聞いてもカタカナの音に変換して理解しようとしてしまうため、正確なリスニングも難しくなります 。
ネイティブスピーカーとの接触機会の少なさ
日常生活で英語のネイティブスピーカーと接する機会が少ないことも、自然な英語の音やリズムに触れる機会を制限し、発音の習得を難しくしています 。学校の授業以外で、ネイティブスピーカーの英語を聞いたり、実際に話したりする機会が少ないため、どうしても机上の学習に偏ってしまいがちです。
間違いを恐れる文化的背景
日本では、間違いをすることや人前で恥をかくことを避ける傾向が強く、英語を話す際に発音の間違いを恐れて、積極的に話すことをためらってしまう学習者が多いです 。完璧主義の傾向も、発音練習への心理的な障壁となることがあります 。しかし、語学学習においては、間違いから学ぶことが非常に重要です。発音は、実際に声に出して練習することで改善されるものですが、間違いを恐れていては、なかなか上達しません。
日本人が苦手とする具体的な英語の発音とその理由
ここでは、日本人が特に苦手とする英語の発音の例をいくつか挙げ、その理由を具体的に解説します。
LとR
英語の /l/ と /r/ の音は、多くの日本人にとって非常に難しい発音の一つです 。その理由は、日本語の「ら行」の音([ɾ])が、英語の /l/([l])と /r/([ɹ])の中間的な音に聞こえるため、両者の区別がつきにくいからです。また、日本語には /l/ と /r/ の音素の区別がないため、私たちの脳は両者を同じ音として処理してしまう傾向があります 。
英語の /l/ は、舌先を上の歯の裏につけて発音するのに対し、/r/ は舌先を丸めて口の奥で発音します 。日本語の「ら行」の音は、舌先を歯茎に軽くはじくようにして発音するため、英語の /l/ と /r/ のどちらとも異なります 。
TH
英語の /θ/(例:think)と /ð/(例:that)の音は、日本語には存在しない歯摩擦音です 。そのため、日本人はこれらの音を、近い音である [s] や [z]、または [t] や [d] で代用することが多いです 。例えば、「think」を「sink」と、「this」を「zis」や「dis」と発音してしまうことがあります 。
/θ/ と /ð/ の正しい発音方法は、舌を上下の歯の間に軽く挟んで息を出すというものですが、この発音方法に慣れていないことも、日本人にとって /θ/ と /ð/ の発音が難しい理由の一つです 。
VとB
英語の /v/(例:van)の音も、日本語には存在しない音の一つで、近い音である /b/(例:ban)で発音されることが多いです 。例えば、「very」を「berry」と、「video」を「bideo」と発音してしまうことがあります 。
/v/ の正しい発音は、上の歯を下唇に軽く当てて息を出す摩擦音ですが、/b/ は両唇を閉じてから開く破裂音です 。日本語の「ば行」の音は /b/ の発音に近いですが、/v/ のような摩擦音は存在しないため、意識して練習する必要があります 。
母音の区別
日本語の母音の数が少ないため、英語の微妙な母音の音の違いを聞き分けるのが難しいと感じる日本人は多いです 。特に、/æ/、/ʌ/、/ɑː/、/ɒ/ のように、日本語の「あ」の音に近いけれど微妙に異なる音の区別は難しいと感じるでしょう 。
また、/iː/(例:see)と /ɪ/(例:sit)、/uː/(例:food)と /ʊ/(例:foot)のような長母音と短母音の区別も、日本語とは異なるため、混乱しやすいポイントです 。
さらに、英語には曖昧母音(シュワ /ə/)という、はっきりとは発音されない曖昧な母音がありますが、これは日本語にはない概念です 。英語の非強勢音節でよく使われる音であり、これを意識することで、より自然な英語のリズムが生まれます。
アクセント
英語の強勢アクセントは、日本語の高低アクセントとは異なるため、どの音節を強く発音すべきか迷うことが多いでしょう 。日本語は各音節をほぼ同じ強さで発音する傾向があるため、英語のような強弱のあるリズムを生み出すのが難しいと感じるかもしれません 。
また、英語ではアクセントの位置が変わると、単語の意味が変わってしまうことがあります 。例えば、「record」という単語は、名詞の場合は最初の音節にアクセントがありますが、動詞の場合は二番目の音節にアクセントがあります。
イントネーション
英語のイントネーションは、文の種類(疑問文、平叙文など)や話し手の感情によって大きく変化しますが、日本語話者は意識しにくい場合があります 。日本語のイントネーションは、比較的平坦であると言われています 。英語では、文末の上げ下げだけでなく、文中の強調したい部分のイントネーションも重要になります 。
英語の発音を克服するための効果的な学習方法
英語の発音は、正しい方法で学習と練習を継続すれば、必ず上達します。ここでは、日本人が英語の発音を克服するための効果的な学習方法を具体的にご紹介します。
発音記号の学習
英語の音素を正確に表す発音記号(IPA:国際音声記号)を学ぶことは、正しい発音を習得するための非常に有効な手段です 。発音記号を理解することで、英語の音と文字の結びつきが明確になり、辞書を使って単語の発音を正確に確認できるようになります 。また、曖昧なカタカナ表記に頼らず、英語本来の音を意識して学習することができます 。
リスニング練習
ネイティブスピーカーの英語を積極的に聞くことは、正しい発音、アクセント、イントネーションを耳で覚えるための基本です 。映画、ドラマ、ポッドキャスト、ニュースなど、様々な種類の英語を聞くように心がけましょう 。最初は聞き取れない部分が多くても、繰り返し聞くことで徐々に耳が慣れてきます。様々なアクセントの英語に触れることも、リスニング力を高める上で重要です。
スピーキング練習
実際に声に出して英語を話す練習は、発音を改善するために不可欠です。
- シャドーイング: ネイティブスピーカーの音声を聞きながら、少し遅れて影のように同じように発音する練習です 。リスニング力と発音力の両方を同時に鍛えることができます。最初は短いフレーズから始め、徐々に長い文章に挑戦してみましょう 。
- 音読: 英語のテキストを見ながら、正しい発音を意識して声に出して読む練習です 。発音記号を確認しながら行うと、より効果的です。自分の発音を録音して、ネイティブスピーカーの発音と比較してみるのも良いでしょう。
- 独り言: 日常生活で思ったことや考えたことを英語で声に出して言う練習です 。アウトプットの機会を増やすことで、英語を話すことへの抵抗感を減らし、発音の練習にもなります。間違いを恐れずに、積極的に英語を使う習慣をつけましょう。
発音矯正アプリや教材の活用
近年では、英語の発音学習をサポートしてくれる様々なアプリや教材が利用可能です 。発音記号の発音を練習できるアプリや、特定の発音(例えば /l/ と /r/ の区別など)に特化した教材などを活用することで、体系的に発音を学習できます。また、自分の発音を録音して、ネイティブスピーカーの発音と比較できる機能を持つアプリもあり、客観的なフィードバックを得ることで、改善点を見つけやすくなります。
オンラインレッスン
オンライン英会話レッスンや、発音矯正に特化したレッスンを受講し、専門家であるネイティブスピーカーの講師から直接指導を受けるのも、非常に効果的な学習方法です 。自分の弱点や課題に合わせて、具体的なアドバイスや練習方法を教えてもらえるため、効率的に発音を改善できます。
ネイティブスピーカーとの交流
ランゲージエクスチェンジのプラットフォームやイベントなどを利用して、英語を母語とする人と積極的に交流することも、実践的な発音力を養う上で非常に有効です 。実際の会話の中で自分の発音を試したり、相手にフィードバックをもらったりすることで、より自然な発音を身につけることができます。間違いを恐れずに、積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
まとめ
英語の発音は、確かに日本人にとって難しいと感じる部分が多いかもしれません。しかし、その理由をしっかりと理解し、今回ご紹介したような効果的な学習方法を実践すれば、必ず克服できます。焦らず、諦めずに、日々の学習を継続していくことが何よりも重要です。