ミドルネームって何?英語の名前の表記の仕方を解説
欧米には古くからミドルネームをつける習慣がありますが、ミドルネームに馴染みのない日本人からすると、どういう理由で用いられているのか分かりにくいと感じる方も多いことでしょう。 この記事では、ミドルネームとはそもそも何なのか
欧米には古くからミドルネームをつける習慣がありますが、ミドルネームに馴染みのない日本人からすると、どういう理由で用いられているのか分かりにくいと感じる方も多いことでしょう。
この記事では、ミドルネームとはそもそも何なのか、どんな理由で付けられ、どんな名前があるのかなど、ミドルネームについて詳しく解説していきます。欧米文化に根付いたミドルネームをしっかりと理解することで、外国人とのコミュニケーションもよりスムーズに進めることができるようになりますよ。
ミドルネームって何?
ミドルネームとは、その名の通り姓と名の間にある名前のこと。元々はキリスト教カトリックの洗礼に関係するものですが、現在は宗教との関連性は薄くなり、他の理由でつけられることもあります。
ミドルネームをつける理由
ミドルネームをつける理由には、実はさまざまな背景が存在します。本来の宗教的な意味から派生的な意味まで、まずはミドルネームをつける理由を紐解いていきましょう。
キリスト教の洗礼名
もともとミドルネームを付ける習慣が生まれた背景には、キリスト教カトリックの「洗礼」という文化が存在します。これはキリスト教への入信の際に行われる儀式で、日本文化に置き換えるとお宮参りに相当するものです。
キリスト教カトリックでは洗礼の際に「洗礼名」を与えられる習慣があり、その名をミドルネームとして用いるようになったのが、ミドルネームの本来の定義とされています。一方、同じキリスト教でもプロテスタントの場合は、「洗礼名」を付ける文化は存在しません。
先祖の名前
現在では、ミドルネームは必ずしも洗礼名でなければいけないということはなく、その一例として先祖の名前を用いるケースも多く見られます。特に長男は、家系を継ぐという意味で父親、祖父といった先祖の名前をつけるのが一般的とされています。
ミドルネームが2つ以上ある人も多く見られますが、このように世代ごとに1つずつミドルネームが増えていったというケースが、よくある理由として挙げられます。
旧姓、母方の姓
同様に、母方の旧姓をミドルネームとして用いるのも非常に一般的です。日本でも結婚する際に、母方の旧姓は失われてしまうケースが一般的ですが、その姓を後世に残すという意味でミドルネームに用いる人も多く見られます。
同姓同名と区別するため
日本には約20万通りの苗字が存在しますが、欧米には約1万通りの苗字しか存在しないと言われています。そのため、必然的に同姓同名の人が増える傾向にあり、他人と区別するという意味であえてミドルネームをつけるということも、欧米では一般的です。
尊敬する人物名
ここまでは何かしら家族に関係するミドルネームでしたが、家族とは全く関係のない人物の名前をミドルネームとして採用することもできます。
例えば尊敬する有名人や偉人などの名前をミドルネームとして採用し、「こんな人物のようになってほしい」と願いを込めることも珍しくありません。ミドルネームに「流行り」があるのも、このためです。
知っておきたい!ミドルネームの基本ルール
欧米諸国でミドルネームを用いる理由をご紹介しましたが、ここからはミドルネームに関して知っておくと便利な諸ルールについて簡潔に触れておきましょう。
ミドルネームの数に制限はない
ミドルネームは1つだけと思う方も多いですが、実はミドルネームの数に制限はありません。自分で複数のミドルネームをつけることもできますし、親がすでにミドルネームをたくさん持っていて、それをそのまま継承するというケースもあります。
有名な話ですが、スペインの画家ピカソの本名は「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアノ・デ・ラ・サンテシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」。
さらに世界一長い名前を持つドイツ人の名前は「アドルフ・ブレイン・チャールズ・ダヴィッド・アール・フレデリック・ジェラルド・フバート・イルヴィン・ジョン・ケネス・ロイド・マーティン・ネロ・オリバー・ポール・キンシー・ランドルフ・シャーマン・トーマス・アンカス・ヴィクター・ウィリアン・ゼクセス・ヤンシー・ゼウス」です。いずれも気の遠くなるような名前ですね。
ちなみにこのドイツ人の名前は、アルファベットのAからZを順番に頭文字として取り入れており、これはまだファーストネームとミドルネームにすぎません。ラストネームを含めると、フルネームはアルファベットで700字以上になります。
これらは非常に稀な例ではありますが、ミドルネームを2つ以上持っている人は、探してみると決して珍しくありません。
ラテン系は苗字を2つ用いるのが大多数
ヨーロッパ諸国やアメリカに関しては以上のようなミドルネームのルールが当てはまりますが、南米をはじめとするラテン諸国では、ファミリーネームを2つ付ける文化が深く根付いています。
例えばセルジオ君のお父さんの苗字が「アルベルト」、お母さんの苗字が「シルヴァ」だとしたら、セルジオ君の名前は「セルジオ・シルヴァ・アルベルト」となります。もちろん、それ以外の理由でミドルネームをつけることもありますが、ラテン系の方の名前は、母方の旧姓をミドルネームとして採用しているケースがほとんどです。
ミドルネームの表記
続いて、ミドルネームの表記の仕方についてご紹介しましょう。ミドルネームの表記方法としては、イニシャルだけを用いる「ミドルイニシャル」も存在するので、使い分けが重要です。
ミドルネームは姓・名の間に書く
ミドルネームは、「ファーストネーム・ミドルネーム・ファミリーネーム」の順に表記するのが基本ルールとなります。例えば、以下に挙げる有名人の名前をみると、真ん中にくる名前がミドルネームであることが分かります。
【例】
Donald John Trump「ドナルド・トランプ」
Michael Jeffrey Jordan「マイケル・ジョーダン」
Arnold Alois Schwarzenegger「アーノルド・シュワルツェネッガー」
イニシャル(ミドルイニシャル)で表記
一方で、ミドルネームのイニシャルだけを残し、「ミドルイニシャル」として1文字で表す例も少なくありません。アメリカでは主に大統領などの偉人に用いられるケースが多く見られます。
【例】
John F. Kennedy「ジョン・F・ケネディ」(Fは Fitzgeraldの略)
George W. Bush「ジョージ・W・ブッシュ」(WはWalkerの略)
宛名の書き方
もし手紙やメールなどを書く際は、基本的にはミドルネームは書かなくても問題ありません。ビジネスシーンでもフルでミドルネームを書くことは少なく、書くとしてもイニシャルに留めるのが一般的です。
ミドルイニシャルを用いる際は、直後にピリオド「.」を打つ必要があります。これは「後ろに何か省略していますよ」という意味を示すもので、ミドルネームをフルで書く際には、ピリオドは必要ありません。
【例】
Mr. John William Smith
Mr. John W. Smith
敬称について詳しく知りたい方は『「先生」宛に送る知っておくべき英語メールの書き方・マナーとは』も併せて参照してください。
日本語表記
もしミドルネームを日本語で表記する場合には、名と一緒にすることが一般的です。多くの場合、ミドルネームは名と同じ扱いとされており、「姓+名+ミドルネーム」というように、名の後にミドルネームを書くスタイルとなります。
ただし、例外的にミドルネームを姓として扱う書類もあるので、受付窓口などで事前に確認しておくことをおすすめします。
日本ではミドルネームは付けられる?
ここまで読んで「私もミドルネームがほしい!」と感じた方も少なくないかと思いますが、残念ながら日本人はミドルネームをつける事ができません。通称としてキリスト教の洗礼名を使うことは可能ですが、これも戸籍上登録することは原則不可です。
ただし、外国出身でもともとミドルネームを持っている場合や、外国人と結婚した際には、ミドルネームを戸籍上でつけることが可能となります。戸籍上ミドルネームが登録されれば、パスポートなどの公的書類にも併記できるので、ミドルネームを大切に守っていくことができるようになります。
ミドルネーム例
最後に、実際によく目にするミドルネームを一覧でご紹介します。もし自分の名前が外国人にとって発音しにくい名前であれば、こうした名前をニックネームとして用いるのもおすすめです。
【男性名】
Alexander(アレクサンダー/アレグザンダー)、Charlie(チャーリー)、Christopher(クリストファー)、Daniel(ダニエル)、David(デイヴィッド)、Edward(エドワード)、George(ジョージ)、Harry(ハリー)、Henry(ヘンリー)、Jacob(ジェイコブ)、James(ジェイムズ)、Jeff(ジェフ)、John(ジョン)、Lee(リー)、Mason(メイソン)、Michael(マイケル)、Noah(ノア)、Oliver(オリバー)、Oscar(オスカー)、Peter(ピーター)、Robert(ロバート)、Thomas(トーマス)、William(ウィリアム)
【女性名】
Alexandra(アレクサンドラ)、Amy(エイミー)、Ann/Anne(アン)、Catherine(キャサリン)、Charlotte (シャーロット)、Chloe (クロエ)、Diana(ダイアナ)、Elizabeth(エリザベス)、Emily (エミリー)、Emma(エマ)、Grace(グレース)、Harper (ハーパー)、Isabelle (イザベル)、Jessica (ジェシカ)、Kate(ケイト)、Lily(リリー)、Louise(ルイーズ)、Marie(マリー)、Mary(メアリー)、May/Mae(メイ)、Miranda(ミランダ)、Olivia(オリビア)、Rose(ローズ)、Sarah(サラ)、Sophia(ソフィア)、Victoria(ヴィクトリア)
まとめ
日本人にはあまり馴染みのないミドルネームですが、欧米人にとっては非常に一般的なものということがお分かりいただけたでしょうか。もともとキリスト教カトリックに由来するミドルネームですが、現代では宗教とはあまり結びついておらず、比較的ライトな理由でつけられているケースも多く見られます。
どのような由来でミドルネームが使われているのかを知っておくと、必要以上に意識することもなくなり、欧米文化への理解も深まります。自分のために1つ選んでニックネーム代わりに使うこともできるので、ぜひ自分にぴったりのミドルネームも探してみてくださいね。