『I think…』だけじゃ伝わらない。角を立てずに自分の意見を伝えるソフトな英語主張術
この記事でご紹介する「ソフトな英語主張術」を習得すれば、あなたは今後、強い口調や断定的な言い方を避けて、人間関係を円滑に保ちながらも、伝えたい核心を明確に相手に届けることができるようになります。特に、断定を和らげる「ヘッジング」と、相手の意見を尊重する「クッションフレーズ」の技術は、ビジネス英語をはじめ、あらゆるコミュニケーションシーンであなたの意見を建設的にするために不可欠です。

導入:なぜあなたの意見は「きつい」と誤解されるのか?
日本人が抱える悩み:「断定的だ」「議論を挑んでいる」と受け取られるのが怖い
あなたは会議やディスカッションの場で、自分の意見を明確に持っているにも関わらず、発言を躊躇した経験はありませんか? 「きつい印象を与えたくない」「角を立てたくない」という思いが強すぎるあまり、結局「No」が言えなかったり、曖昧な表現で終わらせてしまったり…。
特に英語圏の文化では、自分の意見をはっきり主張することが求められますが、その主張の仕方がストレートすぎると、意図せず相手に高圧的な印象を与えてしまうことがあります。このジレンマを解消するのが、本記事で解説するソフトな英語主張術です。
「I think…」の落とし穴
多くの日本人が多用する「I think…」は、確かに自分の考えを伝える基本です。しかし、この表現がシンプルすぎるがゆえに、状況やトーンによっては以下のようなニュアンスで受け取られるリスクがあります。
| 「I think…」が与えうる印象 | 改善策 |
|---|---|
| (フォーマルな場では)幼稚で一方的 | より丁寧な「ヘッジング」表現を使う |
| (議論の場で)自分の意見を押し付けている | 相手を尊重する「クッションフレーズ」を挟む |
| (確信度が低いのに)断定的に聞こえる | 推測であることを示す表現を加える |
本記事の目的:ソフト・アサーションを習得する
本記事の目的は、人間関係を円滑に保ちながら、角を立てずに核心を突く主張術、すなわち「ソフト・アサーション(穏やかな自己主張)」を習得することです。このソフトな英語主張術を習得すれば、あなたも会議で自信を持って発言できるようになります。
主張をソフトにする「ヘッジング」の技術
「ヘッジング(Hedging)」とは、主張の断定度を意図的に下げることで、表現を柔らかくするテクニックです。意見を「事実」としてではなく、「可能性」や「推測」として提示することで、受け手の心理的な障壁を下げることができます。これは、特に複雑な問題や未確定な要素を含む議論で非常に有効なビジネス英語スキルです。
控えめな推測を示す表現 (Level 1: Soft)
これらの表現は、自分の意見が絶対ではないことを示し、議論の余地を残します。
【例文】
It seems to me that the current marketing strategy is slightly outdated.
日本語訳:私には、現在のマーケティング戦略は少し時代遅れであるように思われます。
【例文】
I tend to think that the implementation timeline is too ambitious.
日本語訳:私は、実施のスケジュールは野心的すぎると考えがちです。
【例文】
I’m inclined to believe that shifting focus to a younger demographic would be more profitable.
日本語訳:より若い層に焦点を移すほうが収益性が高いと考える傾向があります。
確度を調整する表現 (Level 2: Balanced)
これらの表現は、客観的な状況に基づいて推測を述べる際に便利です。
【例文】
It appears as though our competitors are gaining traction in the eastern region.
日本語訳:競合他社が東部地域で勢いを増しているように見えます。
【例文】
Perhaps we could consider delaying the launch until the bug is completely resolved.
日本語訳:もしかすると、バグが完全に解決するまでローンチを遅らせることを検討できるかもしれません。
【例文】
One could argue that the price increase might lead to a temporary drop in sales.
日本語訳:価格の上昇は一時的な売上減少につながる可能性がある、と主張することもできるでしょう。
データや事実を根拠にする表現
断定的な響きを避けるため、「データが語っている」という形式をとることで、発言の責任をデータに委ね、角を立てずに主張できます。これは説得力を保ちつつも攻撃的にならない、重要なヘッジング手法です。
【例文】
Based on the survey data, I would say the majority of users prefer the old interface.
日本語訳:アンケートのデータに基づくと、大多数のユーザーは古いインターフェースを好んでいると言えます。
【例文】
The evidence suggests that we need to allocate more resources to the development team.
日本語訳:その証拠は、開発チームにより多くのリソースを割り当てる必要があることを示唆しています。
摩擦を避ける「クッションフレーズ」術
自分の意見を言う前に、まず相手の意見を尊重する姿勢を見せることが、円滑なコミュニケーションの鍵です。この「受け止め」の役割を果たすのが、クッションフレーズです。この技術は、特に反対意見や修正案を提示する際に、相手の気分を害さないために不可欠なソフトな英語主張術の核となります。
相手の意見を認める「受け止め」クッション
一旦相手の意見を肯定的に受け止めることで、その後の反対意見も受け入れられやすくなります。
【例文】
That’s a very valid point, and I agree that budget control is essential. However, I believe we also need to consider the long-term investment.
日本語訳:それは非常に正当なご意見です。予算管理が不可欠であるという点には賛成です。ですが、長期的な投資も考慮する必要があると考えています。
【例文】
I see what you mean about the difficulty of the proposal, and at the same time, this is a necessary step for future growth.
日本語訳:ご提案の難しさについては理解できます。それと同時に、これは将来の成長のために必要な一歩でもあります。
穏やかに反対意見を挿入するフレーズ
「I disagree (反対だ)」と直接言うのではなく、丁寧な前置きを加えることで、議論を建設的なものにします。
【例文】
With respect, I have a slightly different view on the projected sales figures. I think they might be slightly overestimated.
日本語訳:恐縮ですが(敬意を持って)、予測される売上数値については少し異なる見解を持っています。少し過大評価されているかもしれません。
【例文】
I might be wrong, but have we considered the potential regulatory changes coming next quarter?
日本語訳:私の間違いかもしれませんが、来四半期に予定されている潜在的な規制変更については検討しましたか?
【例文】
Another way of looking at this is that prioritizing customer experience over speed might ultimately increase loyalty.
日本語訳:これを別の視点から見ると、スピードよりも顧客体験を優先することが、結果的にロイヤリティを高めるかもしれません。
議論を建設的に進めるための問いかけ
質問形式で自分の考えを提示することで、相手を議論に巻き込み、意見の押し付け合いを避けることができます。
【例文】
How do you feel about an approach that includes a phased rollout, instead of a sudden change?
日本語訳:突然の変更ではなく、段階的な導入(フェーズドロールアウト)を含むアプローチについてどう思われますか?
【応用編】シーン別・丁寧な英語主張術
状況に応じて、適切なトーンを選ぶことがソフトな英語主張術の仕上げです。ここでは、特に重要なビジネス英語のシーンに焦点を当てます。
ビジネス会議でのフォーマルな表現
会議やプレゼンテーションなど、フォーマルな場では、感情的な表現を避け、客観的かつプロフェッショナルな言葉を選びましょう。
【例文】
My recommendation would be to initiate the pilot project immediately to gauge market reaction.
日本語訳:私の提言は、市場の反応を測るために直ちにパイロットプロジェクトを開始することです。
【例文】
It would be beneficial to conduct a thorough risk assessment before proceeding with the expansion.
日本語訳:拡大を進める前に、徹底的なリスク評価を行うことが有益でしょう。
顧客や目上の人との会話で使う究極の丁寧さ
より高いレベルの丁寧さが必要な場面では、謙譲語のようなニュアンスを持つ表現を使います。
【例文】
If I may offer a suggestion, perhaps increasing the warranty period could boost customer confidence.
日本語訳:もし提案させていただくとしたら、保証期間を延ばすことが顧客の信頼を高めるかもしれません。
【例文】
I would humbly suggest that we revisit the previous quarter’s financial report for clarification.
日本語訳:前の四半期の財務報告書を再度確認されることを、謙虚に申し上げますが、ご提案いたします。
メールやチャットでのソフトな主張
書き言葉では声のトーンが伝わらないため、より意識的にヘッジングやクッションフレーズを使います。
- 絵文字や感嘆符(!): 状況によっては、文末に軽く加えることで、堅すぎる印象を和らげることができます。(例: “I tend to agree, but the timeline seems tight! :)”)
- 「Just」の使用: 「Just a thought:」や「I just wanted to suggest:」のように、「ほんの少しの提案ですが」というニュアンスを出すことができます。
まとめ:ソフト・アサーションで人間関係を円滑に
ソフトな英語主張術は、単なる言い回しではなく、相手を尊重し、協調性を保ちながらも自己の意見を明確にするコミュニケーション・マインドセットです。断定を避け、核心を突く表現を使いこなすことで、あなたのプロフェッショナルな評価は大きく向上するでしょう。
【最重要ポイントの要約】
私たちは、きつい印象を与えず、建設的に意見を伝えるための「ヘッジング」と「クッションフレーズ」という2つの主要なテクニックを学びました。これらは、あなたのコミュニケーションをより洗練されたものにするソフトな英語主張術の基盤です。
最重要フレーズ集(チートシート)
今日から実践できる、特に重要な表現をまとめます。
- ヘッジング(推測の提示):
It seems to me that.../I'm inclined to believe that... - クッションフレーズ(受け止め):
That's a very valid point, and I agree that.../I see what you mean, and at the same time... - 穏やかな反対(意見挿入):
With respect, I have a slightly different view on.../Another way of looking at this is... - フォーマルな提言:
My recommendation would be.../It would be beneficial to...
まずは会議や日常会話で、これらのクッションフレーズを一つだけ意識して使ってみてください。練習を重ねることで、ビジネス英語での主張が格段にスムーズになり、対立ではなく「貢献」としてあなたの意見が受け入れられるようになるでしょう。






