
【使役動詞】make, have, letの違いとは?「〜させる」のニュアンスを徹底解説
「母は私に部屋の掃除をさせた」
この文を英語にするとき、”My mother made me clean my room.” と言うのと “My mother had me clean my room.” と言うのでは、実は伝わるニュアンスが大きく異なります。一方は「嫌がる私に、強制的に掃除させた」という響きになり、もう一方は「家の役割として、私に掃除をしてもらった」という響きになります。

このように、日本語の「〜させる」という便利な言葉は、英語では`make`, `have`, `let`といった「使役動詞」を、状況に応じて使い分ける必要があります。これらは文の形(S+V+O+C)も特殊で、多くの学習者がつまずきやすいポイントです。
この記事では、3つの使役動詞が持つ「強制・依頼・許可」という核となるニュアンスを、具体的なイメージと共に分かりやすく解説していきます。
結論:イメージは「力関係」で決まる!
3つの使役動詞を使い分ける鍵は、主語(させる側)と目的語(させられる側)の間の「力関係」や「気持ち」をイメージすることです。
- make → 強制:「(相手の意思に関わらず)〜させる」という強い力。
- have → 依頼・義務:「(当然の役割として)〜してもらう」という対等・ビジネスライクな関係。
- let → 許可:「(相手がしたいことを)〜させてあげる」という、許す立場。
そして、これらの動詞は基本的に [ 主語 + (make/have/let) + 目的語(人) + 動詞の原形 ] という形を取ることを、まずは頭に入れておきましょう。
make:「強制」のイメージ(有無を言わさず〜させる)
make は、使役動詞の中で最も強制力が強い言葉です。主語が目的語に対して、その人の意思に関係なく、何かを強制的にさせるというニュアンスを持ちます。上司が部下に、親が子供に、といった力関係がはっきりしている場面でよく使われます。
また、人の感情を「(意図せず)動かす」という意味でも使われます。
`make` を使う具体的なシチュエーション
【例文】
The boss made his team work on the weekend.
日本語訳:その上司は、チームを週末に働かせた。(訳注:チームは働きたくなかったかもしれない、という強制のニュアンス)
【例文】
That comedy movie always makes me laugh.
日本語訳:そのコメディ映画は、いつも私を笑わせる。(訳注:私の意思とは関係なく、笑うという感情を引き起こさせる)
have:「依頼・義務」のイメージ(当然のこととして〜してもらう)
have は、`make` のような強制力はなく、「それが当然の役割・義務だから」あるいは「サービスとして」誰かに何かをしてもらう、というニュアンスです。美容師に髪を切ってもらう、業者に修理を依頼するなど、ビジネスやサービスの場面で非常によく使われます。
「〜させる」と訳すよりも「〜してもらう」と考えると、日本語の感覚に近くなります。
`have` を使う具体的なシチュエーション
【例文】
I had a plumber fix the toilet.
日本語訳:私は配管工にトイレを修理してもらった。(訳注:お金を払って、専門家として当然の仕事をしてもらった)
【例文】
The teacher had the students read the textbook aloud.
日本語訳:先生は生徒たちに教科書を音読させた。(訳注:授業における、先生と生徒の役割として当然のこと)
※ `have + モノ + 過去分詞` の形で「(モノ)を〜してもらう」という使い方も非常によくします。(例:I had my hair cut. 髪を切ってもらった)
let:「許可」のイメージ(したいことを〜させてあげる)
let は、`make` とは正反対で、目的語(させられる側)が「〜したい」と思っていることを、主語(させる側)が許可するときに使います。「〜させてあげる」「〜するのを許す」という意味合いです。
相手の意思を尊重し、自由にさせてあげる、というニュアンスです。
`let` を使う具体的なシチュエーション
【例文】
My parents let me go to the party.
日本語訳:私の両親は、私がパーティーに行くのを許してくれた。(訳注:私が行きたいと望んでいた)
【例文】
Please let me know your schedule.
日本語訳:あなたのスケジュールを私に知らせてください。(訳注:あなたが知らせたいなら、という相手の意思を尊重した依頼)
【例文】
Let me introduce myself.
日本語訳:自己紹介をさせてください。
【一覧表】`make`, `have`, `let` のニュアンス早わかりマップ
3つの動詞の力関係とニュアンスの違いを、表で確認してみましょう。
動詞 | イメージ | 意味合い | 力関係 | 例文(部屋の掃除) |
---|---|---|---|---|
make | 強制 | 有無を言わさず〜させる | 主語 > 目的語 | She made her son clean. |
have | 依頼・義務 | 当然のこととして〜してもらう | 主語 ≒ 目的語 | She had her son clean. |
let | 許可 | したいことを〜させてあげる | 主語(許可する側) | She let her son clean. |
まとめ
今回は、「〜させる」を表す3つの使役動詞 `make`, `have`, `let` の違いについて解説しました。日本語の「させる」という言葉に惑わされず、その場の状況や相手との力関係を考えて、適切な動詞を選ぶことが重要です。
これらの動詞を使いこなせると、単に事実を伝えるだけでなく、その裏にある人間関係や感情といった、より細やかなニュアンスまで表現できるようになります。ぜひ実際の会話や文章で、意識して使ってみてください。
今日のポイント
- ✅ 強制的に「〜させる」なら → make + 人 + 動詞の原形
- ✅ 役割として「〜してもらう」なら → have + 人 + 動詞の原形
- ✅ 許可して「〜させてあげる」なら → let + 人 + 動詞の原形
- ✅ 鍵となるのは、させる側とさせられる側の「力関係」と「意思」をイメージすること。